このところ東証マザーズを中心にIPO(新規公開)株の上場が相次ぎ、活況を呈しています。上場すればかなりの確率で公開価格を上回る初値を付けるIPO株は、申込殺到で当選する確率は極めて低いのが現状です。しかし、IPO株で利益を上げる方法はそれだけではありません。IPO株の中で稀に公開価格を下回る銘柄がありますが、実はそれらの銘柄こそが絶好の狙い目なのです。

そこで今回は、上場時に公開価格を下回ったIPO株の下値拾いで利益をあげる、「IPO株セカンドステージ投資法」についてご紹介します。

株価急騰が続出のIPO株は現代の打ち出の小槌か

高打率で利益が出るあらゆる株式投資法の中でも断トツの実績を残しているのがIPO株投資です。株式が新規上場される前に証券会社ではあらかじめ個人投資家向けにIPO株の購入予約を受け付けます。しかし、かなり高い確率で公開価格を上回る初値を付けるため、申し込みが殺到し、当選するのは運次第となります。

IPO株の初値形成状況ですが、2017年公開の銘柄に限定すれば84勝10敗、勝率8割9分4厘ですので、とんでもない高パフォーマンスとなります。10敗の中のほとんどは東証1部または2部の銘柄ですので、新興市場(東証マザーズ、ジャスダック)に限ればさらに高い確率で騰がっています。例外もあるため株式必勝法とまではいえませんが、それに極めて近い投資法といえるでしょう。

この上場初値の急騰で華々しい人気を博す段階を「ファーストステージ」とすれば、公開価格を下回り、人気離散となった銘柄がその後見直し買いで上昇する場面を「セカンドステージ」と名付けることができます。

初値を下回れば、見直し買い必至で絶好のチャンス

さて、前述したようにIPO株の中には稀に初値が公開価格を下回ることがあります。この場合は下値買いの絶好のチャンスとなります。キュービーネットホールディングス(東証1部・証券コード6571)がまさにそのケースにあたります。この会社は、10分カット理容店「QB HOUSE」を運営していますので、男性の方にはおなじみでしょう。企業規模や知名度から東証1部に直接上場となりました。

2018年3月23日に上場。公開価格は2,250円でしたが、全体相場が急落していたこともあって初値は公開価格を6%下回る2,115円と予想外に低い株価でのスタートとなりました。では、その後の値動きを見てみましょう。(株価は当日の終値)

3月23日 2,225円(初値比+110円)
3月26日 2,220円
3月27日 2,140円
3月28日 2,011円
3月29日 1,980円 ※上場来安値1,967円を付ける
3月30日 2,080円
4月2日 2,113円
4月3日 2,160円
4月4日 2,160円
4月5日 2,119円
4月6日 2,180円
4月9日 2,225円
4月10日 2,219円
4月11日 2,225円 ※上場来高値2,266円を付ける

業績は好調なのに3月29日には2,000円大台割れとなりました。公開株数が1,125万3,700株と比較的多いことから、投資家の関心が東証マザーズ上場の小型IPO株に向かったのが響いた形です。しかし、さすがに2,000円割れで底を打ち、その後直近のIPO株として見直し買いが入り、2,366円の上場来高値まで上昇。まさに「セカンドステージ」で急騰したのでした。

もし、2,000円割れを売られ過ぎと見て1,000株購入していれば、その後2,200円台で売却し、短期で20万円以上の利益をあげられた計算になります。これならIPOの抽選に当たらなくても、短期で十分利益をあげることができます。

プレミアグループ、信和も下落相場後にチャンスがあった!

では、キュービーネット以前に公開価格を下回った銘柄のその後の動きはどうだったのでしょうか。

まずキュービーネットより3日先の3月20日に上場した信和(東証2部・証券コード3447)ですが、こちらは公開価格1,150円を3.8%下回る1,106円で初値を付け、その後3月30日に1,040円の上場来安値まで売られました。しかし1,000円大台割れには至らずそこから反発。4月5日にはザラ場高値1,184円まで買われ、4月13日現在も1,099円を付けています。

次にそれより前の2017年12月20日に上場したプレミアグループ(東証2部・証券コード7199)は公開価格2,320円に対し、初値は4.3%下回る2,220円とさえない結果となりました。しかし、初日が底値ですぐに上昇を開始、翌年1月22日には3,005円の高値を付け、買い場もないまま推移しました。ところが今度は下落相場が始まります。2月6日には2,271円と再び公開価格割れとなり、絶好の買い場が到来しました。その後は上昇相場に転じ、4月11日には3,140円の上場来高値を付けています。

信和、プレミアグループとも上手く下値を拾えれば1,000株でもかなりの利益をあげることができたはずです。直近3銘柄を見ただけでも3戦全勝で、セカンドステージ投資法はIPO株当選にも劣らない実績を残しているのです。

今後もIPO株の上場予定が続き再びチャンス到来か?

IPO株セカンドステージ投資法さて、キュービーネットの下値を拾い損ねたとしても、まだチャンスはあります。今後もIPO株の上場は続いていくからです。

具体的な投資チャンスの見極め方ですが、まず初日に初値を付ける状況を株式実況番組「STOCK VOICE」で確認します。番組中では公開した企業の社長がゲストに招かれ、業務内容や今後の事業戦略、業績見通しなどを説明しますので、これで今後の株価の伸びが期待できるかをチェックしておきます。

次に初日に値が付かず買い気配のまま終わるようであれば、投資を見送ります。高値掴みのリスクがあるからです。もし公開価格を下回った場合はノート等に銘柄名を記入しておきます。「STOCK VOICE」を視聴する時間が無い方は、証券会社のトレーディングツールのニュース欄でIPO株の初日の状況を確認できます。

そして、その後の株価の推移を見ながら、ここが底値と判断したら買いを実行します。もちろん明確な底値を知るのは難しいので、上場来安値を更新した場合を一つの目安にするのもよいでしょう。IPO株投資に当たらないとお嘆きの方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

※上記記事は当該銘柄への投資を奨めるものではありません。参考程度にお考え下さい。

【キュービーネットホールディングスの株主優待情報】 ※2018年4月13日現在

現在、株主優待は実施していません。もし、株主優待を実施するとすれば無料利用券になる可能性がありますので、それを期待して保有する手もあります。
利用者が大変多いチェーン店ですので、株主優待の新設が発表されれば、急騰することは間違いありません。その意味で楽しみが多い銘柄ではあります。

【キュービーネットホールディングス株価診断】

株価 2,241円(2018年4月13日終値)
株価位置レシオ=91.6%で「超高値圏」。
予想1株配当=18~19円
予想PER(株価収益率)=24.44倍
実績PBR(株価純資産倍率)=3.33倍

10分間でカットする低価格理容室チェーン「QB HOUSE」を運営する美容業大手。駅ナカまたは駅前立地に特化した薄利多売戦略で急成長しています。株価は、2018年3月29日に1,967円の上場来安値を付け、これを底値に直近の新規公開株として見直し買いが入り上昇に転じました。4月11日には2,266円の上場来高値まで切り返しています。

株価位置レシオは91.6%で「超高値圏」、現在は再び上場来高値更新が視野入る位置にいます。今2018年6月期は新規出店や海外事業が順調に推移しており、連結純利益で11億円と7.5%の増益を見込んでいます。

店舗レベルの業績も、直近2018年3月度の月次売上高が前年比で108.6%と好調です。株価指標的にはPERが24.44倍、PBRが3.33倍と割高ですが、これは新規公開株特有の要因で、期待値も含まれているため、それほど気にする必要はありません。株主優待の実施が発表されれば株価の急騰が期待できることから、下落局面での購入を条件に、投資方針は「買い」とします。

※「株価位置レシオ」とは、年初来高値、年初来安値と比較して、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。