中国インターネット通販企業最大手アリババのジャック・マー会長が来日し、大きな話題を呼びました。2018年4月25日には早稲田大学大隈講堂で、学生との対談会が開かれ、4,000人を超える応募者の中から当選した学生が参加しました。ITに興味がある人なら誰もが知る有名実業家がどのような話をするのか、学生たちの関心は高かったようです。
その講演でマー会長はアリババ独自のITチップを開発する意向を発表しました。このチップが開発されれば、アリババにとって一段と飛躍するチャンスになることが予想されます。
今回は、アリババと筆頭株主であるソフトバンクグループ(東証1部・証券コード9984)は果たして世界最大のIT企業グループになれるのか、その行方を探ります。
ライバルのアマゾンを急追するアリババ
通販メインのアリババにとって、ライバルはアップルではなくアマゾンです。
まだアマゾンの首位はゆるぎないものの、アリババが通販取扱高を拡大し、アマゾンを急追しています。
中でも11月11日に開催される、中国インターネット通販業界最大のイベント「独身の日」におけるアリババの売り上げは驚異的です。楽天の年間売上高の4分の1にあたる約2兆5,000億円を売り上げ、圧倒的な集客力を誇っています。
アリババの時価総額世界ランキングは?
さて、アリババの時価総額は世界ランキングでどの位置に付けているのでしょうか。最新のランキングで確認しておきましょう(2018年3月末現在)。
1アップル(米国)
2アルファベット(米国)
3マイクロソフト(米国)
4アマゾン・ドットコム(米国)
5バークシャー・ハサウェイ(米国)
6テンセント・ホールディングス(中国)
7アリババ・グループ・ホールディング(中国)
8フェイス・ブック(米国)
9JPモルガン・チェース(米国)
10中国工商銀行(中国)
アリババは7位ですが、前月のランクよりは1つ順位を上げています。あのフェイス・ブックを抜いたのですから、かなりの躍進といってよいでしょう。すぐ上の6位には同じ中国のテンセントがいますので、同社を抜いてアリババが時価総額で中国企業最大になれるかが当面の注目点になります。
優良企業3本柱で企業規模を拡大するソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは、現在アリババ、携帯電話会社ソフトバンクに、通販大手ヤフーを加え、3本柱でグループ規模の拡大を続けています。
そして、4本目の柱にすべく買収したのが、米携帯電話4位のスプリントです。
では、ソフトバンクグループ各社の状況を整理しておきましょう。
●ソフトバンク
国内携帯電話御三家の一角。ソフトバンクグループが99.9%の株式を占め、現在は非上場になっています。2019年に上場の予定で、実現すればソフトバンクグループとの親子上場となります。
●アリババ・グループ・ホールディング
ソフトバンクが29.2%の株式を保有する持ち分会社。電子商取引マッチングサイトの「阿里巴巴(アリババ・コム)」が急成長を牽引しています。
●ヤフー
米国ヤフーの日本法人で、ソフトバンクが36.3%の筆頭株主になっています。ネット広告、通販が柱で、ヤフーオークションは国内最大級のオークションサイトとして知られています。子会社にアスクルを擁します。
●スプリント・コーポレーション
米国携帯電話4位の事業者で、5,000万人以上の加入者がいます。ソフトバンクが78%の株式を取得し、子会社化しました。
●アーム・ホールディングス
英国の持ち株会社。子会社を通じてプログラミングツール、システムおよびプラットフォーム、ソフトウェアなどの開発を手掛けます。
懸案だったスプリントの収支が改善傾向にあり、今後のグループ力強化に光明が見えてきました。アリババと組んで世界最大のIT企業を目指すソフトバンクグループですが、時価総額上位3位までにはITの巨人、アップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフトがおり、その壁はかなり厚いでしょう。
それでもいつか目標を達成してしまうのではないかと思わせる魅力が孫正義氏にはあります。次にはどのような手を打ってくるのか、市場の注目は今後も孫正義氏、ジャック・マー会長の二人に注がれるでしょう。
上場近づく携帯子会社のソフトバンク
さて、今後の注目はソフトバンクグループの子会社である携帯電話会社ソフトバンクの上場です。少しややこしいので、説明する必要があります。
元々ソフトバンクグループは携帯電話会社ソフトバンクとして上場していました。それが持ち株会社制に転換したことで親会社のソフトバンクグループが上場維持し、子会社の携帯電話会社ソフトバンクは非上場になったという経緯があります。
今後も世界戦略に膨大な資金を必要とするソフトバンクグループにとって子会社の上場で資金調達できるのは大きいです。
そして、ここへきて飛び込んできたニュースが、米携帯電話3位TモバイルUSと4位スプリントの合併交渉です。統合が実現すれば上位2社に匹敵する巨大携帯電話会社が誕生することになるだけに、当分ソフトバンクグループの動きから目が離せません。
※上記記事は当該銘柄への投資を奨めるものではありません。参考程度にお考え下さい。
【ソフトバンクグループの株主優待情報】 優待獲得最低投資額 85万100円(2018年4月27日現在)
3月、9月末現在の100株以上保有株主が対象。
携帯電話 利用料金6ヵ月間1,000円(税抜)割引
タブレット 利用料金6ヵ月間500円(税抜)割引
ワイモバイル 利用料金6ヵ月間500円(税抜)割引
インターネット光 利用料金6カ月間割引
インターネットADSL 基本料金6ヵ月間無料
インターネットワイヤレス 利用料金6ヵ月間割引
※インターネットの割引額はコースによって異なります。
ソフトバンクグループの株主優待は、まだ携帯キャリアを持っていない人には魅力的な優待内容といえます。年に2回優待の権利がありますので、継続保有で実質的に通年割引となります。携帯電話の場合で年間1万2,000円の割引ですので、ユーザーになるなら検討の価値ありです。
【ソフトバンクグループ株価診断】
株価 8,501円(2018年4月27日終値)
株価位置レシオ=52.6%で「中間圏」。
予想1株配当=44~46円
予想PER(株価収益率)=8.51倍
実績PBR(株価純資産倍率)=2.03倍
携帯電話会社ソフトバンクや通販大手ヤフーを擁する国内IT系の代表的企業。アリババの筆頭株主であるほか、米スプリント社買収など積極的なM&Aで国際的IT企業グループを構築しています。
株価は2017年10月13日に1万550円の高値を付けたあとは長期下落相場に転じ、2018年4月9日に7,546円まで売られました。
株価位置レシオは52.6%で「中間圏」。1万円台回復を目指すものの、現在は8,000円台で低迷しています。
今2019年3月期は増収ながら、営業益と純利益は減益の予想です。これはアリババ株のデリバティブに損失が出るのと、前期あったゲーム売却益が剥落するためです。
一方、株価の動きを見ると、M&Aの買収費用が巨額なことから株価上昇の足かせになり、なかなか1万円大台を回復できないのが実情です。そこが単体で成長を続けるファーストリテイリングや任天堂との違いです。
株価的に不人気のため、PERが8.51倍と極端に低く、割安感が際立ちますが、当面は先行投資負担から上値には限界があるでしょう。ただ、中期的には子会社ソフトバンクが上場予定であることから、一時的に買われる場面はありそうです。
したがって、投資方針は短期で「見送り」、中・長期は「買い」とします。
※「株価位置レシオ」とは、年初来高値、年初来安値と比較して、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。