2011年分より5年間遡ってできるようになった還付申告

【損をしないための確定申告】還付申告であれば5年間の有効期限で間に合う確定申告の期間は例年2月16日~3月15日ですが、納税となる申告ではなく還付申告なら1月4日から行うことができ、また5年後の12月28日まで行うことが可能です。2011年分から5年間還付申告を行うことができるようになり、確定申告書等作成コーナーでも2018年1月4日現在、2013年分までの確定申告書作成が行えますので、遡って行う方も増えてきました。税務署や署外の会場に並んで待つのが苦痛な方や、提出書類の整理・税額の計算が3月に入っても間に合わない方は、確定申告期間が過ぎても遅くないのであきらめずに申告の手続きを行ったほうがいいです。なお還付でない納税申告の場合は期限を過ぎると無申告加算税・延滞税などのペナルティの対象になるので注意が必要です。

投資の話題から少し離れますが、給与所得以外の所得が無いサラリーマンが、原則10万円以上(年収310万円を下回ればもう少し低くても可能)の医療費がかかった場合に活用できる医療費控除や、各地の返礼品競争で加熱したふるさと納税の申告は、基本的に還付申告となるので5年間は忘れていても遡ることができます。

上場株式・FXでは過去の損失を申告することが可能に

投資に関する申告で還付申告になるものとしては、直近2017年分で上場株式やFXで利益をあげたが過去の損失に関して申告を忘れていた場合に、遡って申告することが考えられます。なお仮想通貨は過去の損失と相殺することは不可能ですので、このやり方は使えません。投資で生じた損失の申告で気をつけたいのは、損失繰越の有効期限は3年であり、還付申告の5年とは異なる点です。2017年分の40万円の黒字と2014年分の40万円の赤字は、有効期限ギリギリで可能ですが、赤字が2013年分のものであるなら相殺できず、遡って申告する意味が無くなります。一方で2016年分の40万円の黒字と2013年分の40万円の赤字をともに2018年内に申告することは、これはともに5年遡れる範囲内ですから可能です。40万円の黒字が源泉徴収あり特定口座の株取引で発生していたものであれば、所得税61,260円が還付となります。

1度確定申告している場合は損失申告が不可能なことも

還付申告であれば5年間の有効期限で間に合う以上の事例は、確定申告を全く行っていない、忘れていた場合にできるケースです。医療費控除があった、不動産投資を行い所得があるなどすでに確定申告を行っている場合は、5年遡っての還付申告を行えません。一度行った確定申告に対して誤りがあり、正しく計算した場合に所得税額が下がって還付を見込める場合は、更正の請求という手続きを行います。この更正の請求は、FX・株式の損失に関してはどんなものでも認められるというわけではありません。まず、損失の申告し忘れに対する更正の請求は、株式取引のうち申告対象が選択できる「源泉徴収あり特定口座」に関しては認められません。損失か利益かに関わらず選択できる分だけ、一旦申告すると取り消しも効きません。源泉徴収あり特定口座は申告対象の選択により、国民健康保険料を抑えるようなメリットもありますが、申告し忘れには逆に厳しくなります。

またFX・株式の別、株式の口座種別を問わず、確定申告の際の繰越損失の漏れを追加することはできません。2017年分の40万円の黒字と2014年分の40万円の赤字を相殺したい場合に、2014年分・2016年分・2017年分はまだ確定申告していないが、2015年分はすでに確定申告していた(2014年分40万円の赤字は繰越損失として申告していない)ような場合は、2017年分の40万円の黒字と2014年分の40万円の赤字は相殺できないことになります。2014年分で生じた申告はまず2014年分の損失申告を行い、その後2015年分・2016年分・2017年分と順々に申告していくことが相殺の要件になっているからです。

住宅ローン控除・配当/譲渡の課税方式選択は納税通知書送達までが望ましい

年末の住宅ローン残高×(原則)1%が所得税額から差し引ける住宅ローン控除は年末調整で活用することも可能ですが、年末残高証明書の他専用の申告書も記載しなければならないので、勤務先に提出できなかった場合は確定申告で行うことになります。また初年度の住宅ローン控除は年末調整で受けることができず、確定申告が必要です。住宅ローン控除を使うと所得税の還付額が大きく、最大で40万円強に及ぶこともあります。

また所得税が全額還付される場合は住民税でも住宅ローン控除(最大で136,500円)が受けられます。住宅ローン控除の確定申告も5年間遡って行うことが可能ですが、住民税で住宅ローン控除が使えるようなケースでは気をつける必要があります。住民税の住宅ローン控除は、法律上は納税通知書送達日までに申告しないと受けられないという条件があります。住民税の納税通知書送達日は給与から徴収されるサラリーマンは5月10日前後、その他は6月10日前後です。自治体としては3月15日までの確定申告(期限内申告)を申告者にお願いしていますが、少なくともその後4月ぐらいまでに住宅ローン控除による還付申告を行うのが望ましい、ということになります。

また同じように納税通知書送達日までの申告要件があるのが、株式やFXの損失と利益・配当との相殺(損益通算)、あるいは3種類ある配当の申告方法です。源泉徴収あり特定口座の所得であれば、それを申告対象とするかしないかを含みます。例えば2018年3月の段階で、2016年分の上場株配当30万円(所得税45,945円・住民税15,000円が徴収)と特定口座の譲渡損失20万円を確定申告した場合、20万円の損失に対する所得税30,630円が還付されます。

しかし2016年分の所得に基づいて決まる2017年度住民税(2017年6月~2018年5月の間に支払)は、2017年の遅くとも6月上旬には納税通知書が送達されます。2017年6月上旬は確定申告の手続き前であり、配当や譲渡損失はなかった形で住民税額決定が行われていますから、20万円の損失に対する住民税10,000円の還付または控除の処理は行われていません。2017年6月上旬の住民税額決定時までに確定申告が行われていなければ、10,000円分の還付等はもうできないということです。また配当所得を所得税は総合課税、住民税は申告分離課税で申告するような方法も、所得税は還付申告になるなら5年間有効ですが、住民税は納税通知書送達日までに行わなければなりません。

もっとも納税通知書送達日を過ぎてから還付申告を行う場合、住民税額の決定時には実質的に申告不要となっており、結果的には所得税と異なる課税方法になります。このように住宅ローン控除や株式・FXの所得に関しては、5年間還付申告できることの他に、住民税の納税通知書送達日を意識することも重要です。2017年分の還付申告であれば、2018年の4月までに行えば、確実に住民税にも反映されます。

還付手続きの注意点

還付申告の手続きに関しては、原則銀行口座を指定して税務署から振り込んでもらう必要があります。自宅から確定申告書作成コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jpを使用して申告する場合はその場で調べればいいので特に支障はないですが、税務署の窓口で申告する場合は預金通帳など、銀行名・支店名・預金種類・口座番号がわかるものを持参してください。ただ銀行口座に振り込んでもらう方式の他に、(株式配当のように)還付額記載の郵便為替を送ってもらい、郵便局で現金に換金する方法もあります。還付金詐欺で要求されるような、銀行口座のパスワードが必要になることはありません。