2018年2月下旬から3月上旬にかけてのドル/円の為替相場

実際の為替相場を検証していくFXの実地体験ですが、今回は2018年2月19日(月)から2018年3月3日(土)までの動きを見ていきましょう。しばらく円高ドル安が続いていましたが、この2週間では一転して円安ドル高となり、後半に再び円高ドル安傾向となっています。チャートを分析する「テクニカル分析」や経済情勢を分析する「ファンダメンタルズ分析」の両面からこの状況を確認していきます。

※掲載するチャートは、私が取引しているFX会社のパソコン版で、2週間の値動きがわかりやすいように「8時間足」のローソク足チャートになります。
※お伝えしていく時刻はすべて日本時間になります。

強いドル売りの流れから反発

2018年が明けて1月8月(月)には1ドル113円39銭をつけていたドル/円ですが、ドルは右肩下がりの状態で、2月16(金)にはついに1ドル105円55銭まで円高ドル安が進みました。この背景についてはこれまでお伝えしてきた通りです。問題はこのままの状況が続き、1ドル100円台まで円高ドル安が加速していくのか、それともドルが持ち直すのかということになります。このペースでいくと5月までには100円台を割り込むのような事態も考えられます。

そんな中で2月19日(月)を迎えました。中国や米国市場が祝日で休場の中ではありますが、午後10:55ごろには1ドル106円73銭と立て直しの兆しが見られるようになります。この日の日経平均が一時、400円を超える上げ幅を記録したことがドル/円の上昇の追い風となっています。そしてここからジリジリとドル買いの流れとなっていくのです。

高い10年債権利回りに支えられて1ドル108円台回復を目指す

米国の10年債券利回りはついに2.91%の高水準に戻します。2月20日(火)の午後10:55には1ドル107円38銭までドルは回復しました。さらに翌日の2月21日(水)午後12:25には1ドル107円90銭をつけ、108円台への突入も見えてきます。

しかしここで足踏み状態が続きます。107円90銭まで上昇すると伸び悩み、反発して107円34銭まで下げました。翌日の2月22日(木)午前5:10には10年債券利回りも2.95%まで上がり、それに伴い1ドル107円90銭に上昇。しかし息が続かず、10年債券利回りが2.92%まで下がると、ドルは売られて1ドル107円台を割り込み、午後10:40には1ドル106円93銭の安値をつけています。

高い10年債権利回りに支えられて1ドル108円台回復を目指す

テクニカル分析によるレジスタンスライン

明らかに1ドル108円が大きな壁になっています。ここが「レジスタンスライン」となり、上昇を跳ね返しているのです。なかなかブレークすることができず、多くの投資家たちに「上値が限定的」だと判断されてドル売りされ、もとのレンジに戻されています。これは翌週にも同様の動きが見られ、2月28日(水)午前0:50には1ドル107円67銭まで上昇するものの、108円台までは到達できず、午後9:45には1ドル106円93銭まで下げました。メインチャートを確認すると、8時間足チャートの「移動平均線」は軟調を示しており、「ボリンジャーバンド」のインジケーターを確認すると、ローソク足のヒゲも「プラス2σ」まで伸びていません。

状況的には108円ラインをレジスタンスラインとする「Wトップ」を形成しています。ここから大きく下げるパターンですね。ボリンジャーバンドの中央線あたりだったローソク足が、「マイナス1σ」「マイナス2σ」にかかるようになり、3月2日(金)にはついに「マイナス3σ」からも飛び出しました。この時点で、1ドル105円25銭までドルは売られています。

サブチャートの「DMI」を確認してみましょう。実はこの2週間はトレンドが弱まっていることを黄線の「ADX」が示しています。ただし、3月に入ってからは転換傾向にあるようです。赤線の「-DI」がグレーの線の「+DI」より上に位置するようになりましたので、やはり相場の方向性としては下降を示していますね。心理的な節目となる105円が「サポートライン」となりますが、ここをブレークすると「ストップロス」となり、下げ幅が急激に広がる可能性もあります。警戒が必要です。

ファンダメンタルズ分析による円高ドル安の要因

1ドル108円台の復帰が期待されたのは、2月22日(木)午前4:00からの「FOMC議事要旨」の公表でした。ここでさらなる段階的な利上げの可能性を示唆しています。さらに成長率の見直しを上方修正したことも発表し、ドル買いが強まりました。しかし108円台には到達できていません。

さらに翌週の2月27日(火)には予定を繰り上げて「パウエル新FRB議長」の議会証言が行われました。午後10:30には予定原稿が公表され、経済の見通しは依然として強いことと、さらなる斬新的な利上げについて触れています。一定の効果があり、ドル買いは進みましたが、やはり108円台の回復はできませんでした。

ちなみに2月26日(月)以降に発表された米国の経済指標もあまり良好な結果とはいえませんでした。

事前予想よりも下回った経済指標は、26日(月)午後10:30に発表された1月シカゴ連銀全米活動指数(事前予想0.20→結果0.12)、27日(火)午前0:00に発表された1月新築住宅販売件数(事前予想65.0万件→結果57.3万件)、27日(火)午後10:30に発表された1月耐久財受注速報値前月比(事前予想-0.2%→結果-3.7&)・輸送機を除く前月比(事前予想+0.4%→結果-0.3%)、28日(水)午後11:45に発表された2月シカゴPMI(事前予想65.7→結果61.9)、3月2日(金)午前0:00に発表された1月建設支出前月比(事前予想0.5%→結果0.0%)などがあげられます。

注目された1月個人消費支出(PCE)はコアデフレーターと共に事前予想の同じ結果になっていました。(こちらは一時、ドル買い材料となり107円台を回復させています)これらの経済指標の結果が、円高ドル安を加速させた要因のひとつに数えられるでしょう。

リスクオフに大きな影響を与えたトランプ大統領の声明

3月に入り、再び1ドル105円台までドルが下がった大きな要因は、3月2日(金)午前2:30から3:00にかけて発表されたトランプ大統領のコメントです。自国の保護貿易をアジェンダに掲げるトランプ大統領は、「鉄鋼に25%・アルミニウムに10%の追加関税を課す方針」を明らかにしました。中国やユーロ圏はすぐさま反論し、貿易戦争への懸念が高まります。市場は一気にリスクオフとなりました。ダウ工業株30種平均も400ドルを超える下げ幅となり、これが当然のように翌日の日本の日経平均に影響を及ぼして、終値は542.83円安となっています。

また、黒田日銀総裁も2日の午後2:50ごろに「19年度ごろに出口を検討している」とコメントし、円買い株安に拍車をかけました。

実際のところなかなかドル買いの材料が見つけにくい状態です。北朝鮮やシリア内戦の地政学リスクは相変わらず高いままであり、さらに米国と中国・ロシアの関係も冷え込んできています。プーチン大統領からは米国を挑発するような形で、新型核兵器が紹介されています。

今年の米国の利上げ回数が4回となることも織り込み済みの様相です。それがギリギリ下値を支えてはいますが、それ以上に米国の財政赤字が増幅することへの懸念が強まっているのが現状です。上値が限定的な状態で、ドル売りの材料ばかりが提示されています。3月中旬にかけてドル/円はさらに辛抱が必要になるかもしれません。今後、上昇トレンドになるようなきっかけがあるのか、市場を注視する必要があるでしょう。