円高ドル安への推移
2015年には1ドル125円あったドル円相場ですが、2016年に入って円高が進み大幅に下がって1ドル100円付近になる局面もあり、昨年は少し円安方向に戻しましたが1ドル110円付近で推移して軟調な状況でした。そして今年に入ってからも1月に1ドル114円付近であったドル円相場は、2月中頃には1ドル106円程までに円高が進み3月に入って104円程まで下がることもありました。
このように最近になって円高が進んでいますが、この円高が進んでいる背景には幾つかの要因が働いていると推定され、その要因の1つに北朝鮮の問題があります。
円高要因の1つ、北朝鮮の核やミサイルの問題
特に2017年は弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、中距離ミサイルは日本全土を射程に収め、長距離ミサイルの発射に関しても目処を立てることが出来る状況まで至りました。長距離ミサイルに核弾頭を搭載出来るかは不明ですが、北朝鮮としては核保有国としてアメリカと対等に立とうという思惑で米朝首脳会議を開催して次の段階に向かおうとしています。
このようななかで為替が円高に向かう理由は簡単に有事の円高といわれますが、実際は日本の低金利政策にあります。つまり金利の低い円に替えて資金を調達し、その円でドルなどの金利の上昇が見込まれる通貨を購入して運用を行っていた機関投資家などが、北朝鮮問題などの地政学的リスクが発生したときにとっていたポジションを外して反対売買を行うことで円を買い戻していくために、円高となっていくのです。
ドル安が止まらないアメリカ側の説明とユーロが高い理由
一方アメリカ国債の長期金利が上昇しましたがそれでもドル安が続いていて、対円ばかりではなく対ユーロなどでもドルが上がらないことが相対的に円高になっている要因になっています。そしてこのドル安の理由に関しては例えばゴールドマン・サックスは世界経済が回復基調にあり、その結果資源国の輸出が増加するなどによって他国の通貨が強くなり、その結果ドル安の傾向が続いていると分析しています。
一方EU内で各国のGDPの開きを利用して2016年には世界最大の経常黒字国になったドイツは同じEU内の他国との貿易などを行っており、アメリカに次ぐGDPの高さを誇るEUの統一通貨であるユーロの存在価値が上がっていることもドル安の要因になっています。そしてECBのドラギ総裁がユーロ圏内の経済成長に関して見解を述べて将来の利上げを感じさせる発言をするなど、このようなことから対ユーロに関してドルが継続的に売られているために結果的にドル安になる要因の1つになります。
ただ2月5日にNYダウ平均株価が大幅に下落したことがありましたが為替は大きく変動することはなく、為替と株価の連動性はあまり存在していない状況でもあり、そのため株価はドル安の要因にはなっていませんでした。
ドル安を止めて円安に向かうことは可能なのか
このように北朝鮮の核やミサイルの問題とドル安が止まらない状況によって結果的に円高が進行しているのですが、この円高を止めて円安に向かうには、1つは北朝鮮の核やミサイルの問題を解決してドル安を止めることが重要になってきます。この北朝鮮の核やミサイルの問題を解決するために米朝会議が5月に開催される方向で話しがなされているようですし、それに向けて日米首脳会議を開催することも検討されています。
しかし北朝鮮の核保有を認めることは出来ませんし実際アメリカや日本は北朝鮮の核放棄を求めていますから、この米朝首脳会議がどのような結果を生んでくるのかは判断が難しくあまり期待が出来ない部分もありますが、為替や株価的にはこのイベントに向けてポジションがとられる可能性があり、その結果大きく動かされることも想定されるため注意が必要になります。
一方ドル安の進行を止めるには逆説的ではありますがドルが強くなることが重要になってきます。しかしユーロの台頭とユーロを使用する国が強力な経済圏を構築しているため、ドルが売られてユーロが買われことによってドル安傾向は変わらず、結果的にドル高にはなり難い状況ではありますが、例えばシェールオイルなどアメリカのエネルギー資源をEU圏内に輸出を行いドル建てで決済をするなどを行うことによって、結果的にドル安を止めることが可能になると想定されます。