実際の為替相場を検証していくFXの実地体験ですが、今回は2018年3月5日(月)から2018年3月17日(土)までの動きを見ていきましょう。
この2週間では「安値」が1ドル105円35銭、「高値」が1ドル107円27銭でしたが、「もみ合い」の展開で、106円を挟んだ攻防が続きました。チャートを分析する「テクニカル分析」や経済情勢を分析する「ファンダメンタルズ分析」の両面からこの状況を確認していきます。
※掲載するチャートは、私が取引しているFX会社のパソコン版の8時間足チャートになります。
※お伝えしていく時刻はすべて日本時間になります。
サプライズの連続で方向性が読みにくい展開
この2週間は米国や日本でサプライズが相次ぎ、その度に為替レートが上下するという展開でした。詳しくは後述するファンダメンタルズ分析でお伝えしていきますが、ポイントは「米国高官の辞任・解任」と日本の国会で取り上げられた「森友学園への固有地売却に関する財務省の決裁文書の書き換え発覚」です。
事前にやや雲行きが怪しいと感じた方もいたかもしれませんが、突発的なニュースに驚いた方が多かったのではないでしょうか。
リスク回避でドルが売られ始め、急落するかと思いきや、反転しドル買いが進み為替レートが戻るという繰り返しになっています。
実際に3月5日(月)の「始値」と、3月17日(土)の「終値」を比較してみると、わずか50銭ほどの円安ドル高です。米国の10年債権利回りも2.84%ほどから始まり、一時期は2.91%まで上がりましたが、最終的には2.85%に戻っていました。
なかなか方向性が読みにくい展開でしたので、ここは様子見ムードだった投資家も多かったかもしれません。
テクニカル分析からの気づき
オシレーター指標であるDMIを見ていきましょう。赤いラインが「-DI」を示しており、グレーのラインが「+DI」を示しています。黄色のラインは「ADX」です。
日足チャートだとADXは低めの下降線なのですが、掲載している8時間足チャートではADXはかなり高めです。強いトレンドは発生していたことを示しています。
3月5日から3月9日あたりまでは-DIが+DIを上回っているので、下降トレンドです。3月9日から3月15日までは+DIが-DIを上回っており、上昇トレンドです。3月15日の中盤あたりから再度-DIが+DIを上回ってきています。
メインチャートの中央線「移動平均線(21)」を確認しても、同じタイミングで「ローソク足」が移動平均線を上抜けしたり、下抜けしたりしていますね。4本「陽線」が続いたり、4本「陰線」が続いたりと、およそ32時間に渡り上がり続けたり、下がり続けたりしていたことを示しています。
「ボリンジャーバンド」を確認していくと「±2σ」で反発していることがわかります。2週間トータルで考えるともみ合いの展開ですから、±2σで「逆張り」しておくと大きな利益を確保することができました。
3月5日(月)から3月10日(土)にかけてのファンダメンタルズ分析
1ドル105円半ばからのスタートとなりましたが、この「心理的サポートライン」となる105円ラインをなかなかブレークできませんでした。良好な結果で推移している米国の経済状況が下値を支えていたからです。
しかしトランプ大統領が発表していた鉄鋼・アルミニウムへの追加関税に端を発する貿易戦争への懸念が強まっていたのは間違いありません。3月6日(火)午後4:40ごろにEUが米国への対抗措置として、鉄鋼・デニム・バーボンへの関税を検討という報道が入ると、ドル売りに拍車をかけ、1ドル106円46銭まで回復していたところから、午後7:20には1ドル105円86銭まで下落します。
直後の午後8:10ごろ、韓国と北朝鮮が4月に首脳会議開催で合意というサプライズが報道され、リスクオンとなり1ドル106円43銭までドルは買われました。地政学リスクが後退したことで一層のドル高が期待されましたが、ここでまたサプライズが発生します。
翌日の3月7日(水)午前7:30ごろに、ニューヨークタイムズが「コーンNEC委員長辞任の見通し」と報道したのです。トランプ大統領の貿易方針に抗議する意図があったようです。さらに中国への輸入・企業買収の制限検討のニュースが報道され、1ドル105円46銭までドルは急落するのです。
ただし、韓国特使団が「5月までに米国と北朝鮮で首脳会議が開催される」と表明し、3月9日(金)午前10:30ごろには1ドル106円94銭と急上昇します。
米国の経済指標の好結果がドル買いを加速させていました。
3月7日(水)午後10:15に発表された「ADP雇用統計」が事前予想の+20万人を大幅に上回る+23.5万人だったことや、3月9日(金)午後10:30に発表された「雇用統計・非農業部門」が事前予想の+20.5万人をさらに大きく上回る+31.3万人というポジティブサプライズだったことで、ドル高に振れ、1ドル107円05銭まで回復したのです。
3月12日(月)から3月17日(土)にかけてのファンダメンタルズ分析
この週から市場は夏時間へ変更となっています。
107円台での攻防になるかと思われていましたが、3月12日(月)午前10:30ごろに「森友学園への固有地売却に関する財務省の決裁文書の書き換え発覚」というネガティブサプライズが起きます。これにより1ドル106円51銭まで急落。
麻生財務相が「責任は佐川前国税庁長官にあり、進退については考えていない」とコメントしたことで市場は何とか落ち着きを取り戻しました。
3月13日(火)になり、EUはある基準を満たせば米国の関税から免れる可能性があるという報道もあり、さらに米国の「2月CPI消費者物価指数」も事前予想通りだったことから午後9:30に1ドル107円27銭まで上昇します。
ここからどこまで伸ばせるかと期待された矢先の午後9:45に、ワシントンポストから「ティラーソン国務長官解任」の報道が入ります。このネガティブサプライズに再びリスクオフとなり、1ドル106円71銭まで急落しました。
3月14日(水)午後9:30に発表された米国の「2月PPI生産者物価指数」はおおよそ事前予想通りでしたが、「2月小売売上高」が事前予想を下回り、1ドル106円32銭までさらにドルは値を下げました。
ティラーソン氏の後任にはポンペオCIA長官、コーン氏の後任にはラリークドロー氏が指名され、市場ではトランプ大統領の保護主義政策がさらに強まることへの警戒感が広がっていきます。3月15日(木)午後2:15ごろには1ドル105円78銭の安値をつけました。
その後は再び106円台まで戻すものの、3月16日(金)午前10;00ごろにワシントンポストから「マクマスター大統領補佐官が解任」という報道が入り、106円台割れ。
午後10:15に発表された「2月鉱工業生産」、午後11時に発表された「3月ミシガン大学消費者態度指数」「1月JOLT求人件数」がすべて事前予想を上回ったため何とか106円台を取り戻し、1ドル106円15銭で終えています。
今後のポイント
市場の注目は米国の2018年の利上げが3回なのか、4回になるのかに注がれています。パウエルFRB議長になって初めてのFOMCとなりますが、FF金利誘導目標を上げてくるのは確実視されており、ポイントは今後の見通しになるでしょう。
仮に利上げ回数が4回という見通しが強まれば、1ドル107円台への戻り売りも期待されています。ただし、対外政策に強硬派の姿勢の高官が揃ってきたことへのリスクも高まっており、今後のサプライズへの警戒も必要になってくるでしょう。節目の105円台を割り込むと、ストップロスで売りが売りを呼ぶ展開になるので要注意です。