株式投資は投資先企業のスケジュール把握が重要
投資の中でも株式投資は、スケジュールを意識することは非常に重要です。もちろん税制(確定申告)を考える場合は、年末の最終取引日が12月の何日になるかを把握することが株・FX・仮想通貨問わず重要ですが、上場株は投資先企業の年間の日程を意識する必要があります。一番の基本は、事業年度の開始日と終了日です(「決算期」という言葉もよく使われます)。4月1日~3月31日を事業年度とする上場企業(3月決算企業=3月末が決算期の企業)が大多数ですが、実は法人の事業年度は自由に決められます。近年は12月末日を事業年度末日とする上場企業(12月決算企業)が増加し、また小売業は2月末日が事業年度の上場企業(2月決算企業)も多いです。この事業年度に基づき、投資に値するかを選別する決算発表日の他、この日に株を持っていれば配当や優待がもらえる権利確定日、株主としての権利を行使する株主総会開催日のスケジュールが組まれます。
事業年度末日より3営業日前が権利付最終日
税制上の最終取引日にも関わりますが、株を売買注文する約定日と、実際に入出金が行われる受渡日の間は3営業日あります。投資先企業から配当や優待をもらうのであれば、事業年度末日時点で株を買う注文をするのでなく、受渡日として実際に所有していなければなりません。3月決算企業の場合、2018年は3月31日が土曜のため、前日の3月30日時点で株を持っていれば配当や優待をもらう権利を得ますが、3日前の3月27日(権利付最終日)には買い注文を執行している必要があります。
さらに中間期の配当や優待がある場合は、9月末の平日から3営業日前に注文を行う必要があります。12月決算企業の場合は12月末(期末)と6月末(中間)、2月決算企業の場合は2月末(期末)と8月末(中間)で同様に権利付最終日を意識してください。なお優待狙いの株購入は権利確定日やその直前で行われることが多いため、権利付最終日で株価が上昇し翌日(権利落ち日)で下落する銘柄が多いです。これを逆手にとって権利落ち日(例えば2018年3月28日)で購入し、次の権利付最終日(中間期も優待があれば、2018年9月25日)まで保有し続ける戦略もあります。
事業年度(四半期含む)終了後45日以内に決算発表
事業年度終了後、上場企業は1年間の業績をまとめて対外的に決算発表するのが大きなイベントになります。事業年度終了後45日以内の決算発表が求められています。3月決算企業であれば、5月15日までに決算発表します。この決算発表は1年間の本決算だけでなく、3カ月毎の四半期決算も行うことになっています。3月・12月決算企業であれば、2・5・8・11月の15日まで、2月決算企業であれば、1・4・7・10月の15日までに決算発表を行います。
3月決算企業の本決算発表が行われる4月1日~5月15日において、1つのピークを迎えるのが4月30日頃であり、また期限前の5月10日~15日も多いです。なお企業ごとに四半期ごとのサイクルは決まっています。2017年12月期決算(3月決算企業であれば第三四半期、12月決算企業であれば本決算)における決算発表スケジュールの傾向を見てみると、早々に決算発表するあみやき亭(証券コード:2753)は2018年1月4日に発表していましたが、以降2月15日までの傾向を見てみると以下のようになります。
1月中旬:少ない
1月下旬:25日過ぎに増えてくる
1月末日:前後に比べるとピーク
2月上旬:各日とも多いが、5日以降に増える 連休前9日が期間内のピーク
2月中旬:14日まで多い
2月15日過ぎ:相互会社形態の大手生命保険会社が決算発表
また業種によっては、発表日が固まる傾向もあります。例えば証券業界は1月末までに決算発表を終える会社が多く、電力会社や大手の海運会社も1月末には発表しています。一方で自動車業界は2月に入ってから発表する企業が多く、業種ごとに発表スケジュール時期の差があります。銀行業界・鉄道業界は2月15日までの各平日に分散していますが、大手メガバンクやJR各社は1月末に発表しました。
株価は企業業績を先読みして上下するので、実際の決算発表で前期より利益が増えれば上昇、利益が減れば下落という素直な反応にはならないのですが、予想した企業業績より実際の決算発表が良くなった・悪くなったで株価は反応するので、決算発表が株式投資家にとって重要なイベントであることには変わりありません。投資先企業が概ねどの日に決算発表(3月決算企業であれば4月末ごろなのか、5月に入ってからなのか、etc)するかをつかんでおくことは重要です。
通期(年間の業績)予想の業績発表
決算は実績だけでなく、株価に織り込まれる翌期の予想も頭に入れておく必要があります。例えば12月決算企業であれば、2017年12月期の決算発表(発表日:2018年1月4日~2月15日の間)から2018年12月期の決算発表(発表日:2019年1月4日~2月15日の間)までは、翌2019年12月期の通期予想を発表します。2019年の最初のほうで見込まれた通期予想から、時間が経って予想が上方修正されれば株価が上昇、下方修正されれば下落の要因になります。そして2020年1月4日~2月15日の間に発表される2019年12月期の実績により株価が変動することになります。
本決算発表後に定時株主総会招集通知
事業年度終了後の本決算発表が終わると、決算書類や事業報告などを記載した定時株主総会の招集通知が株主に送付されます。定時株主総会は事業年度終了後3ヵ月以内に開催しますが、開催日の2週間前には株主に送ることになっています。招集通知の中身を精査して配当額の承認・取締役選任など議決権行使を行う個人投資家は少ないですが、決算内容を改めて確認しておくことは重要です。グラフを使った業績推移など、決算発表後すぐに公表する決算短信よりはわかりやすい内容で決算内容を記載している企業もあります。
定時株主総会は、3月決算企業であれば6月最終週に開催される企業が多数です。もっとも総会屋対策のために6月末ごろの特定の日に集中していた時期に比べれば日程は分散されてきましたし、トヨタ自動車のように少し前倒しして6月15日頃に開催している企業もあります。また平日でなく土日に定時株主総会を開催している企業もあります。それでも欧米に比べて、開催時期が集中しているという批判があります。
機関投資家は定時株主総会の議案を精査したいと考えるため、定時株主総会を分散して開催するよう経済産業省が各企業に推奨していますが、2017年6月時点では進んでいません。定時株主総会を1ヶ月伸ばした分だけ法人税の申告期限(原則定時株主総会で決算確定しないと、法人税の申告手続きはできません)を延長できるよう税制改正がなされましたが、応じる企業が出ずに成果が出ませんでした。3月決算企業が7月に定時株主総会を開催する場合は、欧米のように本決算と同時に翌期の第一四半期決算を発表するような事態も想定されます。今後の定時株主総会日程が後ろ倒しになる可能性があることは、頭に入れておく必要があります。
定時株主総会を経て配当・優待がもらえる
定時株主総会が終了すると、議案の決議に関するお知らせと配当の支払通知書、そして優待がある会社は株主優待が届きます。配当の支払通知書は、確定申告を行う上で重要な書類です。上場株の配当であれば所得税・住民税とも徴収されているので確定申告の対象としなくても良いのですが、損失との相殺等で所得税の還付金を得たい方は申告に必要ですので、きちんと保管してください。3月決算企業であれば、3月末頃の権利確定日から6月末頃に配当・優待をもらうまで実に3カ月かかります。ただ海外では権利確定日から実際に配当を受け取れる日までの期間がもっと短く、定時株主総会の分散開催(後ろ倒し)とあわせて権利確定日の後ろ倒しをしても良いのではないかという議論もあります。こちらも今後の変化に注目です。