高齢者の見守り問題が急増
ますます加速する超高齢化社会の日本。高齢者の介護や福祉に関する問題が山積しています。自宅介護で高齢者と共に暮らしている、高齢者のみの世帯や独居老人といったお年寄りだけで暮らす家庭も急増しており、家族として地域としてどう高齢者と向き合うかが喫緊の問題となっています。
体が不自由だったり認知症や高次脳機能障害などで介護が必要なお年寄りを一人にしておけないケースが増えています。また、息子や娘家族と別で一人だけで遠くで暮らしているような場合、急病や事故、孤独死など、まさかのときにどう対処するかを考えておかなければなりません。
そこで、最近注目を集めているのが高齢者の見守りサービスです。高齢の夫婦やお年寄りの一人世帯を対象としたサービスで、お年寄りの健康と安全を守るためのさまざまなサービスがあります。見守りサービスは家族がどうお年寄りと向き合うかといった目的によっていくつかの種類があり、自分に合ったサービスを選ぶことが大切です。
どんな見守りサービスがある?
高齢者のための見守りサービスにはいくつかの種類があります。ここでは主な見守りのスタイルをまとめてみましょう。
通報・センサースタイル
自宅に通報ボタンや感知センサーを設置するスタイルです。万一の際、高齢者が自分で通報ボタンを押すと警備会社に通知されセンターと通話したり、自宅まで駆けつけて対応してくれます。また、センサータイプは自宅のリビングや寝室、トイレなど、生活上高齢者が過ごしたり、通る場所に取り付けられたセンサー機器が一定時間人の動きを感知しないと家族に連絡が届いたり、ホームセキュリティ会社のセンターで対応してもらえたりします。この見守りスタイルは主に住宅警備会社が提供しており、ホームセキュリティサービスのオプションサービスであることが多いものです。費用は初期費用をはじめ月額3,000円から5,000円程度です。
訪問スタイル
毎日の食事や食材の宅配サービスを利用すると、配達したときに高齢者の安否確認をしてもらえるサービスです。弁当や料理の材料を宅配するオプションなので気軽に利用できるのがメリットです。また、郵便局では郵便物を配達する際、高齢者に声がけして健康状態や安否を確認するサービスを提供しています。費用の相場は食事の宅配の場合、1日2食分で1日あたり1,000円程度、月額25,000円から30,000円程度です。
カメラスタイル
自宅にカメラを設置して、高齢者の様子を24時間体制で監視する、ホームセキュリティ会社のサービスです。常に安否確認ができ、本人からの相談や呼びかけに応答して万一の際はすぐに警備スタッフが駆けつけてくれます。最近はカメラの設置も簡単に終わります。家族はカメラの映像をスマートフォンやパソコンなどで確認することもできます。初期費用のほか、相場は月額8,000円から10,000円程度です。
代表的な3つの見守りサービス
全国的にサービスを提供していて、広く知られている高齢者の見守りサービスには次の3つがあります。
ALSOK「みまもりサポート」
急な体調の変化やケガで動けなくなったとき、自宅に設置した緊急通報装置端末のボタンを押すと警備員が自宅まで駆けつけてくれるサービスです。端末の「緊急」ボタンが押されるとホームセキュリティ会社のセンターに通知され、スピーカーとマイクを通してスタッフと話したり、応答がない場合は警備員が出動します。「相談」ボタンは24時間いつでも健康相談窓口とつながるので、具合が悪いときや手当ての相談などができます。
郵便局「郵便局のみまもりサービス」
2017年10月からスタートしたサービスで、高齢者宅への訪問や電話による健康状態や安否確認、さらに警備会社と連携してもしものときには駆けつけてくれます。このうち「みまもり電話サービス」は毎日決まった時間帯に電話で体調確認を行い、電話機のボタンでその日の体調を押すと家族に結果がメールで届くサービスです。固定電話なら月額980円で始められるのでとても手軽なサービスとなっています。
象印「みまもりホットライン」
魔法瓶や電気ポットとおなじみの象印が提供しています。レンタル電気ポットで給湯したり、本人が「外出」ボタンを押すと家族にメールで通知が届きます。お湯を使ってもらうだけでさりげない安否確認ができるため、高齢者への心理的な負担が少ないので人気です。1日2回、決まった時間にメールが届き、電源を入れたりお湯を使ったりした時間を日時の履歴やグラフで確認できます。料金は初期費用5,000円のほか月額3,000円が必要です。
IoTってなに?
見守りサービスへの応用も進んでいるIoTが注目されています。いったいどのような技術なのでしょうか。
IoTとは”Internet of Things”の頭文字から取ったIT用語です。インターネットがパソコンや周辺機器をはじめスマートフォンやタブレット、カメラやテレビなどの家電はもちろん住宅など、日常生活のあらゆるものに接続される状態を指します。
もののあらゆる状態がインターネットを通じてすぐに把握できるのが特徴で、IoTを使えば温度や湿度をはじめとした環境状態や位置、動きなどを知ることができます。たとえば、外出先で自宅のドアや窓の開閉がわかったり、ペットの様子を監視したりすることが可能です。
さらに、離れた場所から遠隔操作ができるようになります。スマートフォンやパソコンから帰宅前にエアコンを運転して快適な室温にしておくといった利用方法がその代表例です。
離れたところからその場所の状態を知ることができるIoTを使って、高齢者や子どもの見守りを行うサービスが見られるようになりました。次のご紹介するネスレ日本株式会社の取り組みをみてみましょう。
IoTでコーヒーマシンがネット接続「ネスカフェコネクト」
家庭でのコーヒー消費が増加しているいま、ネスレで開発されたのが専用タブレット端末を組み合わせてIoT化させた「ネスカフェコネクト」です。家庭用コーヒーマシンである「ネスカフェゴールドブレンド バリスタI(アイ)」とタブレットをインターネット接続しているのが特徴です。タブレット画面に登場するCGで作られたエージェントと呼ばれる女性に話しかけるとコーヒーが入ります。コーヒーを飲むとLINEで自動的にスタンプが離れて暮らす家族に送信されるほか、タブレットの音声操作でメッセージのやりとりも可能です。通信ソフトの開発技術はソニーモバイルコミュニケーションズのものが使われています。
離れた親がコーヒーを飲むとLINEスタンプが届く安心感でさりげなく見守ることができます。スマートフォンを持っていない、LINEを使いこなせない高齢者でも声でタブレット端末の操作ができるので、電話を使わなくても気軽にコミュニケーションが取れるようになります。介護の分野でも活用が期待されており長野県小谷村ではヘルパーステーションの利用者安否確認に導入が進められています。
費用は月額料金500円(税込)のみで、コーヒーは飲んだ分だけの支払いです。コーヒーを飲むペースの情報がネスレに自動送信されるため、なくなりそうになったら自動配送されるためとても便利なサービスです。
ますます多彩な展開を見せる高齢者の見守りサービス。親の健康状態や安否を気づかう家族の思い、介護や福祉の立場など、まさかの事態を防ぐためのサービスは今後も多角化していく見通しです。