相場にはトレンドが生じますが、このトレンドを使った取引には二つの方法があります。
「順張り(トレンドフォロー)」と呼ばれる方法と「逆張り(カウンタートレード)」と呼ばれる方法です。今回は、この順張りと逆張りの取引方法についてお話しします。
順張りと逆張り
相場には、上昇トレンド、下降トレンド、持ち合いの3つの状態があります。この3つの状態のうち、トレンドの方向にエントリーすることを「順張り」と言います。上昇トレンドの時には価格がどんどん上がっていくので、買いエントリーを行い、売り決済を行います。下降トレンドの時には価格がどんどん下がっていくので、売りエントリーを行い、買い決済を行います。
トレンドの方向と逆の方向にエントリーすることを逆張りと言います。上昇トレンドの時には、価格がどんどん上がっていきますが、やがてピークをつけて値下がりします。このピークをつけたと思われるところで売りエントリーを行うのが逆張りです。決済は買い決済です。また、下降トレンドの逆張りは、価格がどんどん下がっていきやがてボトムをつけて値上がりすると思われるところで買いエントリーを行います。決済は売り決済です。
順張りはトレンドを見つけるのが鍵
順張りは、トレンド方向にエントリーすればいいのですから、トレンドをどう見つけるかが鍵になります。トレンドを見つけるには様々な方法がありますが、最も基本な方法は移動平均線を用いる方法です。
1本の移動平均線から得られる情報は2つ、その向きと傾きです。移動平均線の向きはトレンド方向を、傾きはトレンドの強さを表します。移動平均線が上方向に向いているときは上昇トレンドを示し、下を向いているときは下降トレンドを示ししています。そして、強いトレンドのときには移動平均線の傾きも大きく、トレンドが終焉に近づけばその傾きは緩やかになってきます。
また、価格と移動平均線の関係を見ると、移動平均線の上側に価格があるときは上昇トレンドを表し、移動平均線の下側に価格がある時には下降トレンドを表します。特に移動平均線と価格が交わることなく、移動平均線に沿って価格が上昇したり下降したりしているときにはトレンドが継続している状態を表しています。
複数の移動平均線同士の関係では、移動平均線が全て価格の上か下の同一方向にあって、パラメーターの小さい移動平均線から順に価格に近い位置にある状態であれば、パラメーターの小さな移動平均線の方向にトレンドを読み取ることができます。例えば、パラメーターが13、26、52の3本の移動平均線を用いているとき、いずれも価格の下側にあって、その方向が上向きであり、価格に近い方からパラメーターが13、26、52の順番に並んでいる時には上昇トレンドです。
移動平均線以外にも、トレンドを読み取るテクニカル分析手法は様々あります。ストキャスティクスやRSIといったオシレーターやボリンジャーバンドなどです。これら複数のテクニカル分析を合わせて用いることで、トレンドの方向をより高い確度で見つけることができます。
逆張りはトレンドの転換を見つけるのが鍵
逆張りは、トレンドと反対方向にエントリーを行うので、トレンドの転換点を見つける必要があります。大きなトレンドの転換点がうまく見つけられれば、新しいトレンドが生じる最初からエントリーできるので、大きな利益を期待することができます。一方、トレンドの転換点を読み間違えると大きな損失を被る恐れがあります。
トレンドの転換点をいち早く見つける方法で有力な方法は、エリオットカウントによる方法です。エリオット波動理論では、トレンド方向の波動は5波構成ですので、波の数をうまくカウントできれば、トレンドの転換点が比較的容易に見つかります。しかしながら、エリオットカウントはその読み方に癖があるので、十分に練習して慣れる必要があります。
移動平均線によるトレンドの転換サインは、価格が移動平均線を割り込み、小さなパラメーターの移動平均線の方向が水平になってきた時や、パラメーターの大きな移動平均線をパラメーターの小さな移動平均線が抜けたときです。小さなパラメーターの移動平均線が大きなパラメーターの移動平均線を上から下に抜けたときはデッドクロスと呼ばれ、下降トレンドへの転換を示唆します。一方、小さなパラメーターの移動平均線が大きなパラメーターの移動平均線を下から上に抜けたときはゴールデンクロスと呼ばれ、上昇トレンドへの転換を示唆します。
ストキャスティクスやRSIなどのオシレーター系テクニカル分析を用いると、ダイバージェンスと呼ばれる現象が生じてトレンドの転換を示唆します。ダイバージェンスとは、価格とオシレーター系の数値が逆行する現象で、例えば上昇トレンドから下降トレンドに転換する場合には、価格のピークが切り上がっているにもかかわらず、オシレーター系の数値のピークは切り下がっていく状態になります。また逆に、下降トレンドから上昇トレンドに転換する場合には、価格のボトムが切り下がっているにもかかわらず、オシレーター系の数値のボトムが切り上がっていく状態になります。
逆張りは転換するトレンドの大きさを見極めることが必要
相場は、上がれば必ず下がり、下がれば必ず上がります。価格の調整のための上下動を繰り返しながら、トレンドを形成していくのです。逆張りの場合注意すべき点は、トレンドの転換がどの程度のスケールの転換なのかを見極める必要があることです。比較的大きなトレンドの転換であれば、逆張りである程度大きな利益が期待できますが、トレンドの微調整の場合には、利益が期待できるどころか損失を被る恐れがあります。特に、トレンドの勢いが強い時には、調整がほんのわずかな値幅であったり、持ち合いで終わってしまうこともよくあることです。
転換するトレンドの大きさを見極め、この「罠」を避けるには、どこで調整が終了するか、調整が止められるのかを予測する必要があります。エリオット波動カウントにおいては、フィボナッチ数がこの見極めに有効に作用します。進行波5波構成のうち、第2波と第4波がトレンドに逆行する調整波になりますが、第2波は第1波の値幅のおおよそ50%程度が目安に、第4波は第3波の値幅の23.6%から38.2%程度が目安になります。
また、きりのいい数字であるグラウンドナンバーや、過去にレジスタンスやサポートとして機能している価格、パラメーター26、52、104、200の移動平均線、ボリンジャーバンドであれば1σや2σ、上昇トレンドラインや下降トレンドラインもよく止められるポイントです。
いずれにしても、いくつかのテクニカル分析を用いて調整が終了するポイントを予測し、リスクと利益幅を鑑みながら取引することが大切です。
順張りと逆張りどちらが有利か
取引に慣れてくれば、利益を得る機会を増やし、大きな利益を期待することができる逆張りも有効な取引手法になりますが、トレンドの転換点を正確に読んだり、調整する値幅を見極めたりとビギナーにとってはリスクが大きいと言わざるを得ないでしょう。
しかし、どうしても逆張りで取引を行うのであれば、必ず損切りの逆指値を置くことをお勧めします。調整が終わって相場がトレンド方向に動き出すと、動きが早くなることも多いので、手動で決済しようとしてもスリップを起して決済できないことがあり、損失が大きく膨らむことがあるのです。
しかし、損切の逆指値を入れておけば、たとえ動きが早くてもスリップを起すことなく自動的にその価格で決済されます。ここは勇気を持って損切を必ず入れるようにしてください。
順張りの取引では、目先のトレンドより一つ大きなトレンドを意識しながらその方向にエントリーすることで、たとえ一旦調整に入ったとしても、またトレンド方向に動き出して利益を上げることができます。順張りは、逆張りよりも随分と安全な取引を行うことができるのです。
もし取引しようとする通貨がトレンドと逆行し調整中であれば、あえてその通貨で取引をするのではなく、通貨を変えて順張りができる相場を探すというのも一つの手段です。FXで勝つ秘訣は、リスクマネージメントをしっかりと行い、損失を出さないことです。ビギナーのうちは、順張りでの取引を強くお勧めします。