FXの実践レポート

はたして経済指標などから分析する「ファンダメンタルズ分析」と、チャートを分析する「テクニカル分析」はどこまで効果的なのでしょうか。2017年12月から2018年1月までのドル/円の為替相場を確認してみましょう。

日足のローソク足チャート

FXの取引を行っていくうえで、「ローソク足チャート」は誰もが確認に使用しているのではないでしょうか。為替相場の変動をとても分かりやすく示してくれます。ただしローソク足チャートもトレードのやり方によって参考にする「時間足」が変わってきます。

短時間の中で何度も売買を繰り返すような「スキャルピング」の場合は、1分足や5分足などを参考にするでしょう。1日に数回のトレードを行い、その日で取引を完結するような「デイトレード」であれば、1時間足や日足を参考にしているかもしれません。長期に渡りポジションを塩漬けにするような「スイングトレード」であれば日足の他に週足まで参考にしている場合があります。

時間足が短いほど直近の状況を反映するので、変化に敏感に反応することができます。ただし変動が激しく、テクニカル分析もなかなかうまくはまりません。「ダマシ」が多く発生してきてしまうからです。逆に時間足が長いと「ダマシ」が減りますが、直近に発生した大きなトレンドに対して鈍感な反応になってしまいます。

「どんな取引をしたいのか」によって参考にするローソク足チャートの時間足は異なるわけです。今回はオーソドックスに「日足のローソク足チャート」を使用して分析していきます。

2017年12月から2018年1月までの日足チャート

それでは私の取引しているFX会社の日足チャートを実際に見てみましょう。こちらは2017年11月28日から2018年1月19日までの「ドル/円」の為替相場の動きになります。

画面の上が「メインチャート」と呼ばれており、こちらにローソク足チャートが表示されます。赤が「陽線」、青が「陰線」です。細い線は「ヒゲ」と呼ばれるものです。ローソク足チャートについては以前にお伝えしていますので、詳細について再度確認したい場合はそちらをもう一度読んでみてください。

2017年12月から2018年1月までのドル/円の為替相場

画面の下が「サブチャート」になります。「オシレーター系」の指標はこちらに表示されます。他にも資金管理の状態やポジションの状態なども表示されるのですが、そちらは割愛させていただいています。

同じFX会社のチャートでも、「PC用」と「スマホ用」のアプリは内容が異なったりします。スマホの方が簡易なシステムになっており、PCの方がテクニカル分析用の指標が多く、注文方法のバリエーションが豊富です。掲載しているのはPC用のチャートです。

テクニカル分析するための指標について

メインチャートの方にはローソク足チャートの他に「トレンド系」指標の「ボリンジャーバンド」を表示しています。8本もありますね。1本だけ短く、12月22日手前で切れていますが、こちらは「遅行スパン」です。設定は21日になっていますので、現状の価格チャートがそのまま21日過去に表示されています。残り7本は間隔こそ変動していますが、11月28日から1月19日まで続いています。真ん中の線が基準となる「21日移動平均線」です。その上下が「±1σ」さらに「±2σ」、一番外側が「±3σ」となっています。ボリンジャーバンドの詳細を知りたい場合は以前の記事を確認してください。

サブチャートにはオシレーター系の指標として「DMI」が表示されています。黄色の線が「ADX」です。赤の線が「-DI」、グレーの線が「+DI」です。DMIの詳細を知りたい場合も以前の記事を確認してください。

このようにテクニカル分析用の指標はいろいろと組み合わせることができます。今回は互いの弱点を補え合える組み合わせにしています。ボリンジャーバンドは「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を確認するのに好都合です。トレンドを確認して「順張り」もできますし、「レンジ相場」(ボックス相場)であれば「逆張り」にも使えます。DMIはよりトレンドをはっきりと確認するためです。DMIはトレンドには強いのですが、もみ合いには弱いので、そこをボリンジャーバンドで補います。

テクニカル分析をしてみよう

まずはローソク足チャートですが、きれいに「トリプルトップ」(ヘッド&ショルダー、三尊天井)になっています。1ドル113円40~60銭あたりが「レジスタンスライン」になっており、三度大きく跳ね返されているのがわかります。トリプルトップの場合は三度目に跳ね返されると大きく下降する傾向があります。それが1月10日の大きなドル安からの下降トレンドです。

1月17日に唯一の陽線がありますが、「ネックライン」の1ドル112円を割った後は、「押し目買い」が入っても下降トレンドは続きますので、実はこの1月17日が追加の「売りのシグナル」になります。流れ的には今後は1ドル110円も下回ってくることが予想されます。

ボリンジャーバンドでは1月10日以降、-2σを突破した状態が続いています。ボリンジャーバンドは縮小と拡大を交互に行っていきますので、ここから標準偏差の線の間隔が広がっていきます。これはトレンドが強まっている傾向を示しています。ギリギリ-3σのバンド内に収まっていますが、下降は続いていますね。ちなみに-2σまでに価格が収まる確率は95.5%です。レンジ相場であれば逆張りする絶好の機会ですが、トレンドが強まっている場合は通用しません。逆張りすると損失が膨らむのです。

実際にサブチャートのDMIを確認すると、1月9日以降ADXが上昇しています。さらにここで下降してきた+DIをADXが上抜けしています。これは「売りのシグナル」になります。ADXはトレンドの強さを測る指標ですから、ADXが上昇しているということは、この場合、下降トレンドが強まっていることを示しています。

ファンダメンタルズ分析をしてみよう

経済情勢や政治情勢を分析するファンダメンタルズ分析を確認してみましょう。1月8日まではドルは上値を目指して何度もレジスタンスラインにトライしています。

1月5日に発表された「12月の雇用統計」は、平均時給・失業率ともに事前予想通りで、非農業部門雇用者数のみ事前予想を下回っています。米国が発表している経済指標は他のものを含めてそこまで悪い数値は出ていないのです。それにも係わらずドルは1月9日から下降していきます。

下降トレンドを引き起こした一つの原因は、1月9日に日銀による超長期債対象の買い入れオペの減額が発表されたことです。突然のテーパリングに量的緩和の縮小が予想され、円買いが起きました。ここで1ドル113円を割っていきます。

さらにトランプ大統領が対中国の巨額貿易赤字を減らすための制裁措置を実行することを表明すると、1月10日には中国側から米国債の購入縮小や停止を検討していると報道されます。これは後に中国国家外為管理局が否定することになるのですが、欧州市場中心にドル売りが加速し、一気に1ドル112円を割り込みました。

米国経済が良好で、2018年も数回の利上げが予想されていただけに、この展開には驚いた投資家が多かったのではないでしょうか。事前に予想するには難しい突発的な出来事だといえます。この時期、資金が手薄の中で逆張りやドル買いの「ナンピン」をしてしまうと、強制ロスカットされてしまいます。

ちなみに予算案が上院で採決されず、政府機関が一時的に閉鎖されることになったため、今後もリスク回避のドル売りが続く可能性があります。