これまでもFXの取引で勝つための分析方法を様々お伝えしてきました。分析は大きく分けて、日々発表される経済指標を確認しながら今後の為替相場の変動を予測する「ファンダメンタルズ分析」と、チャートを分析する「テクニカル分析」になります。専門用語も多くなっていますので、過去の記事を読み返してから今回の内容に目を通していただくとより理解度が増します。
今回はテクニカル分析の中から「トレンド系指標」の一つである「パラボリック」と「オシレーター指標」の一つである「モメンタム」についてお伝えしていきます。
パラボリックとはどのようなものなのか
為替相場のトレンドをフォローするための指標となるのが「パラボリック」(parabolic)です。相場の買われ過ぎや売られ過ぎを判断する指標である「RSI」を考案したJ・W・ワイルダー氏が、このパラボリックも考案しています。正式名称は「パラボリック・タイム・プライス」です。
パラボリックとは「放物線の」という意味になります。メインチャート上に点で表示され、ローソク足チャートとの位置関係によって、買いのシグナルや売りのシグナルとなります。表示されるドットラインは「SAR」(ストップ&リバースポイント)と呼ばれます。
パラボリックがテクニカル指標として人気がある理由は「見やすさ」「分かりやすさ」です。「一目均衡表」には実に5本のグラフが登場しますし、「ボリンジャーバンド」には移動平均線の他に±1σ、±2σ、±3σまであります。理解するまでにやや時間を要しますし、メインチャートの画面も複雑になりがちです。しかしパラボリックは実にシンプルです。色の異なる2種類の点が並んでいるだけです。
パラボリックの計算式
パラボリックのSARを求める関数には、「極大値」と「加速因数」というものが必要になります。もちろん取引しているFXの会社のアプリが自動的に計算してくれるので、特に計算式を覚えなくても大丈夫です。
【SAR=前日のSAR+AF×(EP-前日のSAR)】という計算式で、「AF」が加速因数、「EP」が極大値になります。初期設定ではAFが0.02、EPが0.20になっているはずです。こちらの設定は変更可能で、数値が大きくなるほど検出値が増え、価格を敏感に反映した放物線になります。逆に数値を小さく設定すると大雑把な放物線となるわけです。
これにはメリットでデメリットがあり、数値を大きく設定することによって現状の価格を敏感に反映できますが、その分だけ「ダマシ」も多くなります。数値を小さくするとダマシが少なくなりますが、鈍感になる分だけ一瞬のチャンスを逃す可能性も増します。
まずは使ってみることが経験値となりますので、初期設定のままで活用してみてください。ちなみにAFは00.2以上0.20以下での設定になります。
パラボリックの買いと売りのシグナルはどのようなものか
それでは実際にこのパラボリックの活用方法についてお伝えしていきます。なんといってもパラボリックのメリットは見やすさとわかりやすさです。買いと売りのシグナルも同様です。チャートを見れば一瞬で判断がつきます。
まずは「買いのシグナル」ですが、「SARが下降していき、上昇しているローソク足と交わったとき」になります。もちろん時間足によって状況は大きく異なりますので、よりダマシを予防するためにはより長期で分析できる「日足」で確認するのがベストです。「売りのシグナル」は逆になります。「SARが上昇していき、下降してくるローソク足と交わったとき」です。
ただし、他のテクニカル指標同様に万能というわけではありません。パラボリックの弱点は「ボックス相場」です。「もみ合い」の局面では効果を発揮しにくいのです。強いトレンドが発生しているときにこそパラボリックは威力を発揮します。
パラボリックはトレンドの転換も知らせてくれますので、取引する際の「エントリー」のタイミングや「エグジット」(利益確定)のタイミングを判断するのに活躍してくれるのです。
ですから他のテクニカル指標と上手に組み合わせることが重要になります。方向性指標の「DMI」と併用し、「ADX」で強いトレンドを確認するなどが有効的になります。他にも「指標平滑平均線」である「EMA」を使用した「MACD」と組み合わせるケースもありますが、こちらは狭いレンジでは曖昧な判定になるという注意点を押さえておく必要があります。
モメンタムとはどのようなものなのか
今回はオシレーター系の指標である「モメンタム」(momentum)についてもご紹介しましょう。こちらはパラボリックとは違い、サブチャートに表示されることになりますが、見やすさやわかりやすさはパラボリックと似ています。
モメンタムの関数はとてもシンプルで、計算式は【現在の価格-ローソク足N本前の数値】です。ローソク足何本分前と比較するのかは自分で設定できますが、初期設定は10です。基本は10か20を指標として活用します。単純に比較するだけなので、一目均衡表の「遅行線」と同じ意味合いになります。
ちなみにモメンタムというのは「勢い」という意味です。相場の勢いが加速しているのか、減退しているのかを判断するための指標です。オシレーター系の指標ですが、トレンドの確認をするために用いられることも多いです。もちろんオシレーター系指標らしく「逆張り」にも活用が可能です。
モメンタムの買いと売りのシグナルはどのようなものか
サブチャートに表示されるラインはわずかに1本です。縦軸の基準は「0」です。モメンタムが0よりも上に位置しているのであれば、価格は上昇の勢いが強いことになりますので、上昇のトレンドが発生している可能性があります。この場合は「買いのシグナル」になります。
モメンタムが0よりも下に位置しているのであれば、価格は下降の勢いが強いことになります。下降トレンドが発生している可能性もあります。この場合は「売りのシグナル」です。
ただし極端に大きなモメンタムや小さなモメンタムの場合は、「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」とも考えられますので、ここでは逆張りが有効的です。つまり大き過ぎるモメンタムは「売りのシグナル」、小さすぎるモメンタムは「買いのシグナル」ということです。
さらにポイントになるのが「0をまたいだケース」です。プラスだったモメンタムが0からマイナスに落ち込んだり、マイナスだったモメンタムが0をまたいでプラスに上昇した場合は、「トレンドの転換」を意味している可能性が高くなります。この場合は「順張り」が有効です。モメンタムがマイナスに転じたら「売りのシグナル」、プラスに転じたら「買いのシグナル」です。
転換のシグナルは他にもあります。RSIやMACDと同じように、価格の変動と指標の変動が逆行している場合は「ダイバージェンス」(逆行現象)が発生している可能性を疑わなければなりません。ダイバージェンスはかなり強いトレンド転換シグナルです。ここでは価格のトレンドの逆張りが有効的になってきます。
ということで、今回はトレンド系指標の「パラボリック」とオシレーター系指標の「モメンタム」をご紹介してきました。どちらもこれ以上はないくらいシンプルな指標になっていますので、気軽に使用してみてください。いつもお伝えしていますが、いろいろなテクニカル指標が考案されていますので、まずは一度試してみることが重要です。そのうえで自分の取引に合った分析方法を見つけていくことをお勧めいたします。