確定申告の期間は例年2月16日~3月15日となっておりますが、ギリギリになってしまう人は3月15日かその少し前に申告(税務署に出向いて申告するか、自分で計算して郵送)という行動パターンになりがちです。仮想通貨で取引した方ではじめて申告するようなケースでは、申告の手続きがわからないままギリギリでもなんとかなると考えられる方もいらっしゃいます。

源泉徴収ありの特定口座で株取引している場合はすでに税金が徴収されているのであまり心配はいらないですが、株取引でも源泉徴収されない口座で取引されている方やFX・仮想通貨の取引をしている場合は、納税になるケースがよくあります。申告して計算した結果十万単位を超える多額の納税になった場合、納税期限も3月15日ですからすぐ納税資金を用意しなければなりません。申告を期限内に行っても、期限内に納税もしないと延滞税の対象になります。申告が2月までに終わらず3月になってしまった方は、以下の点をおさえておくと良いです。

必要経費を入れ所得20万円以下にし、住民税の申告にもちこむ

【株・FX・仮想通貨の確定申告】確定申告がギリギリになりそうな場合の注意点株式取引は譲渡所得に該当するためできない方法ですが、FX・仮想通貨取引のように雑所得に該当する場合は、決済差益から必要経費をマイナスすることが認められています。必要経費は、取引を行う際に利用したパソコン等機器の本体購入代や修理代、機器使用により発生する光熱費や通信費、FX・仮想通貨取引を理解するためにかかったセミナーや書籍の費用が該当します。ただFX・仮想通貨取引以外にも利用している場合は、取引に利用している割合を見積り、その分だけ必要経費に算入します。

例えば年間10万円通信費・光熱費が発生しているが、取引に利用している割合が30%と見積もられる場合(パーセンテージは大雑把でも構いません)、3万円を必要経費に算入します。計算結果として例えば年末調整済みの給与所得の他に20万円の雑所得(仮想通貨取引によるもの)しか無い場合は、確定申告は不要となります。復興特別所得税込みの所得税率が40.84%に該当する高所得者の場合、20万円×40.84%=81,680円の所得税を払わずに済みます。FX取引の場合所得税率は15.315%と固定されているため、最大で30,630円を支払わずに済みます。この場合でも住民税の申告は行う必要がありますが、住民税は申告と同時に納税にはなりません。提出先自治体で計算したのち、給与所得からすべての住民税を天引きする場合は5月、そうでない場合は6月に税額が通知され、その後に支払うことになります。

なお確定申告不要制度が認められるのは、年収2,000万円以下の方で勤務先において年末調整が行われる場合、もしくは年金が年400万円以下の方で、他にFX取引・仮想通貨取引による雑所得などが20万円以下の方に利用できる方法です。事業所得がある自営業者などは利用できませんので注意してください。また20万円を超え確定申告義務が出た場合でも、使える所得控除を漏らさず入れているかも気をつけてください。所得税率は課税総所得金額に応じて変わり(記事の末尾参照)、所得控除を入れることで所得税率が下がります。社会保険料控除は通常何らかの控除額が入るはずですし、生命保険の支払があれば生命保険料控除が受けられます。

参考記事:<a href=”https://xn--hck6a9a3a3cl0j7al2328j687d.com/?p=4398>【株やFXにかかる税を減らせることも】医療費控除や保険料控除などを申告しよう</a>

振替納税の手続きを行い4月20日に納税する

確定申告せざるを得ず多額の納税が出てしまう場合、原則的な納税期限は3月15日までですが納税期限を延ばせる方法はあります。その1つは口座振替による方法です。所得税の口座引き落としの期日は3月15日ではなく、翌月の4月20日と決まっています。すぐ払うのは難しいが1ヶ月ほど余裕があれば支払いができる場合、振替納税の手続きをとってください。はじめて振替納税の手続きを行う場合は、3月15日までに税務署に口座振替依頼書を提出しなければなりません。この方法は、本税以外のお金はかかりません。

クレジット納付の手続きを行う

確定申告がギリギリになりそうな場合の注意点2016年分よりクレジットカードによる所得税納付も可能になりました。国税クレジット納付のWebサイトhttps://kokuzei.noufu.jp/ で手続きを行うことにより、手続き日を含む締め日の後に(カード会社にもよりますが3月15日手続きであれば4月もしくは5月に)決済されます。ただしクレジット決済手数料が本税にプラスされます。クレジットの納付のWebサイトに記載されていますが、10,000円までは税込82円、それ以降は10,000円刻みごとに82円ずつプラスされますので、税額によっては決済手数料がかさむことになります。普段クレジット決済されている方には便利な方法ですが、振替納税より余分に出費が掛かりますので注意してください。

延納の届出を行う

1回で納税するのが厳しい場合は、納税額の半分が限度ですが延納の届出により分割払いを行うこともできます。例えば40万円の納税額が出た場合は、確定申告書に記載するだけで20万円まで延納することができます。延納していない分については期日通り納税しなければなりませんが、延納分は5月31日が期限になります。

なお延納分については、金額によっては利子税の対象になることに注意してください。利子税とは遅れて納付する税に係る遅延利息の性格があり、2018年は年利1.6%です。利子税の他に延滞税もありますが、延滞税は延納の手続きをせず税を遅れて支払った場合に課される罰金的な税で、納期限から2か月までは年利2.6%、2か月以降は年利8.9%と高くなります。利子税・延滞税とも計算して1.000円未満であれば徴収されません。5月31日に延納税額を納付するとして、延納利子税がかからない延納税額は30万円弱です。このパターンと異なる延納を考えている場合は、税務署に個別に相談する必要があります。

株の売却などで納税資金を確保する場合の注意点

2017年に急騰していた仮想通貨が2018年に入って急落傾向にあります。2017年中には大きな利益が出たが、すでに納税資金を使っている、円に換金できないもしくは2017年中に値上がりした後に決済していると言った場合、納税に困ることになります。株式投資も行っていれば売却して資金確保することはひとつの方法です。

源泉徴収あり特定口座で株式を売却し黒字が出た場合は、所得税・住民税が予め20.315%徴収されるため、税引後の売却額から税金を支払うことになります。一方で源泉徴収なしの証券口座で取引を行った場合は、税引前の売却額から支払うことになります。後者のケースで黒字が出ている場合は、今度は2019年に行う2018年分の確定申告で納税資金が確保できるかが問題です。仮想通貨に対する税率は最高55%ですが、円換算でなく物品購入の決済により課税されていたり、使い込んでいたりしなければ所得税・住民税は本来払えるはずのものです。税金の滞納は個人の信用情報にも関わり、国や自治体などから受けられる優遇措置において不利になるので注意が必要です。税金を払うのが自転車操業的になってしまう方は、株式取引においては源泉徴収あり特定口座で取引しておくのが良いです。

仮想通貨に関しては、サラリーマンの方が取引している場合で言えば、発行された平成29年分の源泉徴収票を確認して、売買差益+給与所得控除後の額―所得控除の額 が下記のどの課税所得に該当するか確認し、どれくらいの税額がかかるか事前に予測しておくと良いです。

所得税率