日本でソーシャルレンディングの投資対象としの人気は徐々に上がりつつあり、その市場規模は2016年度は約500億円、2017年度はその2倍近い数値に達するとの見解もあります。特に最大手であるmaneoでは、これまでの累計投資金額が1000億円を突破するなど資金調達額がどんどん増えています。一方でこれだけブームは加熱しながらも、ソーシャルレンディングを取り扱う会社はこのところあまり増えていません。なぜて増えていないのかそういった背景を探ってみましょう。
日本では今20社以上のソーシャルレンディング会社がある
まず現在日本では20社を超えるソーシャルレンディング企業があります。代表的なものではmaneo、そしてSBIグループの一つであるSBIソーシャルレンディング、海外投資に特化したクラウドクレジット、不動産担保案件に特化したラッキーバンクといた会社がとくに人気を集めています。これらの会社が営業開始したのはmaneoが2008年、SBIソーシャルレンディングが2011年と少し前になりますが、その他の会社が開業したのは2013年から2015年にかけてといったものが多く、その時期にソーシャルレンディングを取り扱う会社のブームがあったことが分かってきます。
2017年に新しくソーシャルレンディング事業の乗り出したのは3社
一方で2017年にソーシャルレンディングの取り扱いを開始した企業わずか3社にすぎません。4月に取り扱いを開始したアップルバンク、そして7月に取り扱いを開始したレンデックス、最も新しいのは8月に営業開始したポケットファンディングです。ソーシャルレンディングの市場規模が2016年から2017年で約2倍に成長すると言われる中で、同様に取り扱いを開始する企業も同じ勢いで増えていってもおかしくないところですが実際にはわずか3社にしか過ぎません。そしてさらにその3社が全て成功しているとも言い難い状況なのです。
成功しているのはアップルバンクとレンデックス
昨年ソーシャルレンディングの営業を開始した3社の中で、特に大きな成功を収めているがまずアップルバンクと言えるでしょう。アップルバンクはmaneoグループに属しておりmaneoと同じようなウェブサイトのシステムを取っています。そのためにmaneoの既存ユーザーにとっても使いやすく、宣伝効果の面で、ある程度成功を収めることができたのでしょう。
アップルパークの会員数は約1500人、集めた金額も10億円を突破しており、1年も営業していないソーシャルレンディング会社中ではなかなか上々の出発と言えます。アップルバンクは給料前借りシステムを構築する会社に融資をするという、独特の案件を有しています。他の案件と比べて特に安定性が高いと断言できるものではないのですが、ユニークな案件を取り扱っているということで、融資金額を集めることに成功していたのでしょう。
レンデックスは非常に好条件で投資できるソーシャルレンディング会社になっております。それぞれの案件の条件は利回りが9.5%から10%、そして外部の審査機関による不動産評価額の算定を受けているので、担保を取った不動産の信頼性も非常に高いものになっています。取扱総金額は7月にスタートして3億円から4億円といったところですが、案件に対する投資金額の募集状況を見る限り、最近は満額まで投資資金が集まるようになっています。つまり、多くの投資家にとって投資対象としての価値がある会社とみられるようになってきているのです。
ポケットファンディングは、逆に客集めに苦戦しているようであり、3億円の投資案件を年末に出していましたが、その上限金額に全く達していませんでした。
申請の手間が膨大にかかる
ではなぜ最近ソーシャルレンディングの営業開始する会社が増えていないのか、その理由として2つのポイントが考えられます。
一つ目はソーシャルレンディングの営業を開始するための申請書類として、膨大な量なものが必要とされるという点です。これはソーシャルレンディングの運営を行っている会社の社長インタビューなどからでもわかってくることであります。ソーシャルレンディングの運用を開始するために、300枚以上の莫大な量の書類を金融庁に提出しなければいけないということです。例えばレンデックスの社長インタビューなどを見ると、2015年にソーシャルレンディングの取り扱いを開始したいと考えたが、実際に申請が許可されるまでには2年近い時間がかかり、ようやく2017年に認可が下りたという話をしています。
また金融庁でもソーシャルレンディングがどういった投資手法なのかという知識がまだまだ不足しており、書類のチェックにも時間がかかるということでした。書類の作成に時間がかかるだけではなく、もちろん貸金業取扱法の免許も必要ですし法律面で様々な制限がかかってくるということがわかります。さらに金融庁の書類チェックの時間もかかってしまうために2016年頃からのソーシャルレンディングブームを見てこれからソーシャルレンディングの取り扱いを始めたいという会社が出てきても、まだ認可が下りないという背景があるとも考えられるでしょう。
そのため2016年に申請を始めた会社が2018年にようやく営業開始できるということも起こり得ます。これだけの理由のせいであれば、まだまだソーシャルレンディングの新規取り扱いの会社が出てくる可能性がありますが、もう一つソーシャルレンディング会社がそれほど増えない理由もえられるのです。
利益を出している会社もあまり多くないので、取扱が増えない?
それはソーシャルレンディングを営業を行っている会社で、あまり利益が出ていないという現実です。オーナーズブックの運営元であるロードスターキャピタルは、決算情報の発表しており東証マザーズへの上場も果たすなど、非常に業績は好調に思えます。しかしその決算内容を見ると、同社の利益の大半は不動産の売買によるものが大きくソーシャルレンディング事業は利益が出ているものの、会社全体の利益のわずか数%にしかなっていないことがわかります。
そしてソーシャルレンディング業界では大手と言われるSBIソーシャルレンディング、ラッキーバンク、クラウドクレジットという会社も決算情報を見ると3社とも全て赤字です。ソーシャルレンディングは貸しているお金の総額が増えていけば、その金利が会社の収入となるために、収入も自動的に増えていきます。しかし融資先が見つからなければ、当然金利を得ることはできません。今この3社とも、累計で100億円以上の融資総額を誇っていますが、それでも黒字が出ていないということは事業を始めてから黒字化に到達するまでにはかなりの融資金額が必要となることが考えられます。
そういった状況を鑑みると、すぐにでも事業を黒字化しなければいけないという体力のない会社ではソーシャルレンディング事業に乗り出すのは難しいのではないでしょうか。特に会社規模が大きい会社は、維持費や従業員の人件費といった固定費は大きくなります。ソーシャルレンディングでの収益だけで10人~20人と言った社員を養っていくようになるには100億円以上の融資金額がなければいけないのかもしれません。
ソーシャルレンディングを取り扱う会社がこれから増加していくかは、未知数な点があります。一方で市場規模は着実に増加しているために、融資金額が増えればそれだけ会社の利益も増えることになり黒字化が進む背景は整ってきています。会社の数はそれほど増えないまでも、ソーシャルレンディングに投資をすること自体はそう難しくはないために、今人気を集めている企業の経営は安定していく傾向にあるのではないでしょうか。