クラウドクレジットの先行きは順調なのか?
1月16日にテレビ東京系の「ガイアの夜明け」という番組でソーシャルレンディング会社の一つであるクラウドクレジットが登場しました。クラウドクレジットは海外向け融資のファンドに特化したソーシャルレンディング会社の一つであり、特徴的なファンドを提供していることでも知られています。

テレビで取り上げられたことによりクラウドクレジットの世間に対する認知度が高まり。これから投資家からの資金流入が増えていくことも予想されますが、同社が提供している海外向けファンドは本当に大丈夫なのでしょうか。またクラウドクレジットの現在と投資先としての将来性についても考えてみましょう。

クラウドクレジットのファンドの現状

クラウドクレジットが投資家に対して提供しているファンドはペルー、欧州。そしてカメルーンなどの世界の各国から成っています。日本で現在営業しているソーシャルレンディング運用会社では、一部はアメリカの不動産専門ファンドを提供している会社もありますが、基本的にはほとんどの案件が日本国内の会社に対して融資をしています。そのため日本国内だけに依存するのが危険と考える投資家に取っては、リスク分散の意味で海外の案件に対する投資ができるメリットもあるのです。しかしクラウドクレジットの案件の中には、法人向け融資だけでなく個人向け融資も含まれています。

さらにテレビ番組内で見られたように、ペルーの非常に小さな商店などに対する個人向け融資も行っており、その取り立てをする様子も見られましたが、返済能力の確実性で見れば、日本の法人向け融資よりも劣るものがあると考えられそうな内容になっていました。実際に欧州で融資されている個人向け融資のファンドでは、返済遅延だけではなく貸し倒れリスクが高まっており、投資した資金が回収できないのではと考える投資家も増えています。

またテレビ番組内で取り上げられたカメルーンファンドも、想定以上の利回りが為替変動により得られた実績があるものの、昨年夏以降は返済の遅延、そして思った通りの利回りが得られないだけではなく、投資した資金の大部分が戻ってこないという、投資家としては嬉しくない状況が発生しているとサイトに記載されています。ただしクラウドクレジットの場合は、きちんと各ファンドについて現況の報告を行っている点は投資家としては評価できるポイントになります。基本的にクラウドクレジットではリスクは非常に高いものと謳って投資を募っていますので、投資家としても株やFXなど元本損失リスクが十分にある投資と同程度のリスクは織り込み済みで投資をしている人が多いのではないでしょうか。

クラウドクレジットの財務状況は

ガイアの夜明けの番組内容から、クラウドクレジットの現状を考える同時に気になるのはクラウドクレジットの財務状況です。テレビ番組内で取り上げられたクラウドクレジットは東京都の茅場町、つまり一流のビジネス街にオフィスを構え、社員数も30人以上の人間がいるということでした。その社員たちも銀行や商社など一流の企業出身の人間が多く、それなりの人件費を支払っていることが予測されます。

実際に同社が発表している財務状況や決算情報を見ても、2億円近い赤字になっており、まだまだ黒字化は遠いです。その代わりにそういった人間のパイプを生かしてか、伊藤忠など大規模な会社から資本金の提供を受けるなどの、数々の提携を産んでおり、赤字転落しながらも会社の経営の方はそれほど滞っているような様子は見えません。

資金は順調に集まっているが、固定費が高すぎる?

また番組中では投資家から集めた資金が50億円を突破して、社員達が喜ぶ様子が見られました。ただ50億円はあくまで累計の金額で、現在融資中の金額ではありません。仮に現在運用中の資金総額が30億円程度と見積もってみましょう。そこで5%の利ざやを取っていた場合、年間の金利収入は1億5,000万円です。たった1億5,000万円では30人を超える社員を養うことは到底できるわけがありません。オフィスの賃料だけでも年間1,000万円を超える金額でしょうし、30人を超える社員となると、人件費が年間で数億円にもなることは容易に想像できます。

同社は2014年からソーシャルレンディング運用を開始し、2018年で5年目に突入をしました。募集金額50億円は業界トップクラスではないものの、なかなか順調な数字といえ、同社の方針に賛同する投資家も多数現れています。そのおかげ定期的に投資金額も集まっていることはテレビ番組からも伝わってきます。しかしこの事業規模でありながら、社員数30人以上というのは、はあまりにも人員が多すぎるとも考えられます。社長も番組中で50億円ではなく5,000億円、そして5兆円などにしていかないと意味がないという風に語っていましたが、まだまだ社長の思うような規模のビジネスには到底届いていないというのがクラウドクレジットの現状と考えられます。

テレビで取り上げてもらうということの意味

ここでクラウドクレジットがテレビで取り上げてもらったという意味を考えてみましょう。 クラウドクレジットの杉山社長は東大法学部を卒業し、大手証券会社と外資系の金融機関で勤務をしてきたという経歴を持っています。さらにその過程で多くの人と知り合い、現在も繋がりを持っているからこそ、これだけの数の材を集められ、また会社を運営していけていると考えられます。

そのコネは非常に多岐にわたるものがあり、テレビ局や雑誌など、各種のメディアとの繋がりも持っているでしょう。テレビ局に取り上げてもらえれば、番組を見た投資家を一気に集めることが可能になり、またソーシャルレンディングの知名度と自分の会社の知名度を上げることができます。特に「ガイアの夜明け」は経済や金融に興味を持つ人が多数視聴している番組です。新しい投資手法として、ソーシャルレンディングの存在を知ってもらい、さらにその中でも高い収益率を誇り、また社会的貢献的な仕事も行っているクラウドクレジットの印象を良くするにはもってこいの番組なのです。

現在決算情報だけを見れば数字は決して良いと言えないクラウドクレジットです。ガイアの夜明けサイドがクラウドクレジットを見定めたというよりも、クラウドクレジットの方からテレビ番組に自分たちのことを取り上げてほしいと、お金を払って依頼していたということも考えられます。

今後の投資はやや慎重になるべきか

現在クラウドクレジットは資金を集めることには成功しているものの。同社が想定しる規模のビジネスにはまだまだ到底達しておらず、決算情報を見れば財務状況もかなり厳しいと言えるものがあります。さらに海外のファンドも高利回りを謳っているカメルーンファンドで遅延が多数発生し、投資家も思ったような利益を得られない状況が続いています。テレビ番組を見るに社長が海外に直接向かって事業者の開拓をしているのは良いことなのですが、そうするとどうしても社長が会社に不在の時間が増え、ビジネスの決断スピードが遅くなってしまうこともあるでしょう。

カメルーンファンドの内容を見るに、日本では到底考えられないリスク、例えば事業者が担保を持ち逃げして行方をくらましたなどの問題点が起きていることが分かってきます。確かにクラウドクレジットの利回りは10%を超えるものが多く、非常に魅力的とも言えるのですがこれまで以上にリスクをよく考えていき、またクラウドクレジットという会社の倒産リスクについても想定しなくてはいけない時が来ているのではないでしょうか。