2016年版とマイナーチェンジした確定申告書等作成コーナー
確定申告の中でも株式やFXのような金融取引の申告は、他の所得と比べて入力項目が複雑な傾向にあります。パソコンを使って確定申告をすることができる国税庁Webの確定申告書等作成コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jp/に関して、「先物取引等に係る雑所得等」に該当するFXの入力画面は2016年分と大きく変更されていませんが、株式のほうはマイナーチェンジが行われています。2016年分では損益通算のグループを上場株式等(上場株や国債・地方債・上場社債)と一般株式等(非上場株式・私募債等)にまとめる大改正を行ったため入力画面が変わりましたが、2017年においても使い勝手の向上のためかまた変更されています。ここでは、変更点中心に絞って操作方法を解説することにします。
配当所得の課税方式の選択
配当所得の申告については過去複数の記事(例えば
【シミュレーション事例あり】株式配当所得のお得な確定申告の方法とは
など)で詳しく触れていますが、課税方法により税額が変わるため、この選択は比較的重要な項目です。簡単に言えば課税所得金額(確定申告書第1表の26番、図の赤枠)が900万円以下では総合課税、それを超えると申告分離課税か申告不要(申告対象としない)が有利になります。2016年(平成28年)分ではラジオボタンで選択する方式で選択項目であることがわかりにくい画面でしたが、2017年(平成29)年分はこの点が改善され、選択した課税方法が黄緑色で表示されるようになっています。どちらで申告するか迷われている方は、まずは申告しない(上図のように「配当等がない」を選択)で所得税額の計算を行い、申告分離課税→総合課税の順で計算し税額を比較すると良いです。理由は、後述する配当金の入力方法をご覧いただければわかります。
特定口座年間取引報告書の入力
特定口座で株式取引している場合に関しては、特定口座年間取引報告書が取引金融機関から発行されるため、それを添付して申告します。「『特定口座年間取引報告書』の内容を入力する」という緑色・白抜きの大きなボタンが2017年分より使われ、特定口座年間取引報告書を入力することや添付書類として必要なことがわかりやすくなっています。記載内容については 【どの範囲まで記載されるか?】確定申告に利用する「特定口座年間取引報告書」を学ぼうで詳しく触れていますが緑色のボタンを押した後は、入力することは報告書の内容をほぼ転記すればよいだけで、この点は2016年分以前と変わりません。複数口座ある場合は、「もう1件入力する」ボタンを押して次の画面に移ってください。
※譲渡損益と配当はどちらかのみの申告も可能 配当のチェックを外すと削除される
なお配当を受け入れている特定口座に関しては、配当が損失と相殺されていない限りは、譲渡益と配当のどちらか一方を選択して申告することも可能です。また総合課税を選んだ場合は追加の入力画面がありますが、総合課税の際に所得税額から差し引ける配当控除が、配当所得の種類により変わるからです。
通常の国内株配当であれば、そのまま「計算」ボタンを押せばOKです。申告分離課税を選択した場合はこの画面は出ませんが、一旦申告分離課税で入力して総合課税に切り替えた場合に、配当控除の計算画面で計算しないと税額計算がされません。反対に総合課税で入力して申告分離課税に切り替えた場合は、追加で入力すること無く税額計算されますが、比較した結果総合課税が有利だと判明した場合、総合課税に再度切り替える段階で、また配当控除の計算画面で計算し直す必要があります。そのため、配当等が無い(申告不要)→申告分離課税→総合課税の順に切り替えて、所得税額を比較検討したほうが良いのです。比較検討の結果申告分離課税が良いと分かった場合は、課税方法を切り替えるだけですし、申告不要が良いと判断した場合は、「特定口座年間取引報告書」入力画面の「配当」チェックボックスを外してデータを削除すればよいのです。
一般口座の入力は取引ごとの入力が必要
一般口座で上場株取引している場合は、取引明細から入力することになり面倒になります。上場株の取引に絞って解説しますが、「特定口座(源泉徴収あり・源泉徴収なし)以外で上場株式等の取引がある。」にチェックを入れて、「株式等の『取引明細』などの内容を入力する」ボタンを押すと、取引明細の入力画面に移行します。ここから先は2016年分以前と大きく変わりませんが、画面に沿って1件1件取引を入力していく方法と、この画面は飛ばして合計額のみ入力する(ただし取引明細はEXCEL等自分で集計しておく)方法があります。いずれの場合でも、例えば下記のような内容を記載したものを提出する必要があります。
配当に関しては、源泉徴収あり特定口座に受け入れている場合は「特定口座年間取引報告書」の入力で年額を入力すればよいので、非常に楽です。そうでない場合は、支払通知書に基づき「『配当等の支払通知書』などの内容を入力する」ボタンを選び、1枚ずつ入力します。こちらも複数枚入力する場合は、「もう1件入力する」ボタンを押します。支払通知書を入力することや、添付書類として必要なことがわかりやすくなっています。特定口座年間取引報告書の配当と同様に、この画面も総合課税と申告分離課税で入力項目が変わります。
課税方法で総合課税を選択した場合は、上記赤枠部分の入力が追加で必要となります。「(1)イ 支払通知書の種類」について上場株配当の場合は「1 上場株式配当等の支払通知書」を選びます。ロの外貨建資産割合・非株式割合に関しては、国内上場の株配当についてはいずれも「1 記載なし」を選択すればよいです。そして「(2)配当等の種類」は「1 上場株式に係る配当等」を選択します。このような形で選択することにより、所得税額から配当額の10%(配当控除)を差し引くことができます。投資信託の場合は、外貨建資産割合等に応じて配当控除額が変わってきます。配当のデータ削除の方法は、以下の画面を参照してください。
繰越損失の入力
2017年分の申告であれば、2014年(平成26年)~2016年(平成28年)分のいずれかにおいて損失を申告しており、2016年分まで繰り越している場合は、「平成28年分の申告で上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越した方」で「はい」を選び「『繰り越された譲渡損失』を入力する」ボタンを押して入力します。「はい」「いいえ」の選んだほうが緑色のバックで表示され、この点も見落としをする危険性が低くなりました。この箇所は昨年2016年分の申告書を見て転記すればいいのですが、昨年2016年分に確定申告書等作成コーナーで電子申告または書面申告書作成を行い、申告データを保存している場合は、保存したデータを読み込んで2017年分の申告書を作成することでそのまま転記されます。
※2016年=平成28年分の確定申告書付表で繰越損失が記載されている箇所
※昨年保存データから確定申告書を作成する場合の入口画面 繰越損失が転記される
変更点を理解し確定申告書の作成を行えるようになることは重要ですが、申告不要なものを申告対象にするか、配当の課税方式をどうするかなど申告パターンが複数ある場合の税額比較も重要です。所得税の還付額や納付額を申告パターンごとに比較し、有利な方法で申告するようにしてください。