投資信託は、運用のプロに投資を任せる金融商品です。そのため、投資信託の購入者や購入予定者の大半は、運用会社の運用の仕方についてあまり考えないのではないでしょうか。しかし、投資パフォーマンスを向上させるには、投資信託がどのように運用されているのかをしっかり把握しておく必要があります。
投資信託の運用スタイル
投資信託は、運用会社がそれぞれの運用方針を元に投資を行います。選択したファンドの運用会社によって投資の姿勢が異なるため、狙えるリターンも変わってくるのです。そのため、投資信託を購入する前に、対象となるファンドとその運用会社の運用方針を把握しておく必要があります。
運用会社の運用方法は、パッシブ運用とアクティブ運用の二つに大きく分けられます。パッシブ運用とは、市場全体の動きに合わせて行う運用方法のことです。投資をする際、特定の目標となる指数の銘柄と同じ内容を資産に組み入れて運用を行います。したがって、運用パフォーマンスも目標の指数とほぼ同じ結果になるのが通常です。リスクを抑えた安定的な運用が可能なインデックスファンドは、この方法で運用が行われています。
アクティブ運用とは攻めの姿勢を打ち出し、積極的に投資をしていく運用方法を言います。具体的には、特定の目標となる指数や市場平均よりも、高いリターンをあげることを目標にして運用していくのです。運用会社がそれぞれ独自の投資の考え方に基づいて、運用を行うところに特徴があります。そのため、アクティブ運用をする際、パッシブ運用をするとき以上に、ファンドや運用会社の選択にこだわらなければなりません。また、アクティブ運用は、高いリターンを得られる分、リスクも高くなります。そのため、一時的に大きな含み損が発生するケースもめずらしくありません。それを許容できないのであれば、パッシブ運用を行っているファンドを選択して投資をしたほうがよいでしょう。
それから、アクティブ運用は、パッシブ運用よりも市場分析や投資方法の決定などで運用会社の手間がかかります。したがって、アクティブ運用のファンドは、パッシブ運用のファンドと比較して、一般的に手数料が割高になります。
運用の目標の指数「ベンチマーク」
投資信託において、運用の目標の指数のことをベンチマークと呼ぶ場合が多いです。書籍やインターネット上の投資信託の解説文の中にも、この文言が散見されますが、何のことかよくわからなかったという人もいるのではないでしょうか。投資信託をパッシブで運用する場合もアクティブで運用する場合でも、ベンチマークを目標に運用しますが、その具体的中身が違います。パッシブ運用の場合は、ベンチマークとの乖離を気にしながら運用します。パッシブ運用はベンチマークに沿って投資を行うので、運用パフォーマンスもなるべく同じようにする必要があるからです。これに対して、アクティブ運用は、ベンチマークよりも運用パフォーマンスが上回るように投資を行います。市場をさまざまな角度から分析し。将来的に値上がりしそうな資産へ投資をしていくのです。そのため、アクティブ運用を行う場合、よい意味でも悪い意味でも運用パフォーマンスがベンチマークよりも乖離します。ベンチマークの具体的な意味は、パッシブ運用とアクティブ運用で変わってくるので、正確に把握しておいたほうがよいでしょう。
インデックスファンドの運用の特徴
インデックスファンドは市場平均の利回りを目指しているので、リターンを得ることよりも、リスクを抑えた形で運用するのが特徴です。そのため、複数の地域と資産に分散して投資を行うインデックスファンドが少なくありません。インデックスファンドの代表的なベンチマークはいくつかあります。具体的には、日本株式はTOPIXか日経平均株価、先進国株式がMSCIコクサイインデックス、新興国株式がMSCIエマージングマーケットインデックスです。この四つのベンチマークだけで日本と数十か国の株式へ分散投資が可能となります。さらに、国内外の債券やリートを組み込むバランスファンドへ投資すれば、100以上の国の複数の資産へ投資を分散できます。インデックスファンドの投資資産や投資する国の幅広さを知ると、投資家はそのスケールの大きさを感じることができるのではないでしょうか。
インデックスファンドは値動きも読みやすいので、計算しながら運用できるのも大きな特徴です。リーマンショックのような資産価値が大きく下落する出来事が起こった場合は例外ですが、通常は大幅に価格変動が起こることはありません。したがって、値動きを気にしないで投資できるタイプのファンドだと言えるでしょう。
また、インデックスファンドは、ベンチマークに沿って運用がなされているので、手間をかけることなく運用方針を決定できます。そのため、運用にかかるコストも少なくなるので、ファンドの運用手数料も低くなることが多いです。
アクティブファンドの運用基準とその手法
株式のアクティブファンドの運用はグロース、バリュー、会社の規模を基準にすることが多いです。グロースとは、会社の成長する可能性や収益性を基準に投資の判断を行うものです。今後成長が見込まれて高い収益を得られそうだと判断できる企業へ投資していくのです。バリューとは、企業の実態と比較してその価値が割安か否かを判断する投資基準を言います。株価が割安であれば、自然と本来の価値まで上昇するので利益を得られるというわけです。会社の規模を基準に投資判断を行う場合は、株式の時価総額と流動性を考慮します。
株式のアクティブファンドの運用手法は大きく分けて、トップダウンアプローチとボトムダウンアプローチがあります。前者は投資先の国や業種の割合を先に決め、その範囲内で具体的に投資する企業を選択していく手法です。一方、後者は企業の実態を判断して、その中から魅力的な企業を選択する手法になります。トップダウンアプローチに比べてボトムダウンアプローチのほうが、より自由度の高い運用手法だと言えるでしょう。
債券のアクティブファンドは、格付を運用基準にするのが一般的です。格付とは、投資したお金が戻ってくる可能性を表したものです。格付の高い債券は、信用力も高く投資適格と判断されます。
他の投資信託へ投資して運用しているケースも多い
投資家が投資信託を購入するために資金を提供した場合、そのファンドが直接株式や債券などに投資して運用していると思っている人も多いでしょう。しかし、ファンドの中には、他の投資信託へ投資して運用している場合も多いです。大手の運用会社では、ファミリーファンド方式で運用しているケースが目立ちます。ファミリーファンド方式とは、運用会社が取り扱っているファンドに提供される資金をまとめて運用する方法のことです。まず、投資家が購入する投資信託に資金を提供しますが、これをベビーファンドと呼びます。そして、複数のベビーファンドが投資する大元のファンドのことをマザーファンドと言い、このファンドが株式や債券などの取引を行うのです。ファミリーファンド方式で運用されている場合、マザーファンドの純資産総額が多ければ、ベビーファンドの純資産総額が少なくても、繰り上げ償還の心配する必要はありません。また、投資家はベビーファンドに対してだけ手数料を負担すればよいのも大きな特徴です。
それから、ファンドオブファンズの方式で他の投資信託へ投資して運用する会社もあります。ファンドオブファンズとは、投資先のファンドが系列の違うファンドへ投資する運用方法のことです。この方式で投資信託を運用すれば、各資産への投資を専門とするファンドにそれぞれ投資できるので、効果的な運用を実践できるメリットがあります。しかし、その反面、手数料が二重に発生してしまうのが難点です。