超大型のトランプ減税実施

就任以来「米国第一主義」を掲げ、国際的には批判を浴びることの多いドナルド・トランプ大統領ですが、2017年末に決定した法人税の大幅な引き下げで、経済界から評価の声が高まっています。日本企業も多く進出している米国市場だけに、実施されれば恩恵も多いでしょう。
そこで今回は、トランプ減税実施で恩恵を受けそうな日本株の特集をお届けします。

35%から21%に法人税大幅引き下げ、米有力企業が投資拡大へ

今回発表されたトランプ減税の特徴は、法人税をこれまでの35%から一気に21%に下げる、大胆な税率の改正です。この大幅な引き下げ発表を受けて、米国の有力企業が積極的な設備投資や従業員の待遇改善などへ資金を投じる意向を表明しています。

まずアップルはAI(人工知能)向け事業に今後5年間で300億ドル(日本円で約3兆3,000億円)の投資計画を表明。これに伴って2万人の雇用を創出するとしています。さらに先進製造業への投資基金を50億ドル(同5,500億円)に増額するなど、世界のリーディングカンパニーに相応しいスケールの大きい投資は米国経済にかなりのインパクトを与えるでしょう。

設備投資のほかに、従業員の待遇を改善する意向を表明している企業もあります。小売り大手のウォルマートは最低時給を10ドルから11ドルへ10%の大幅な引き上げに踏み切ります。金融業界では、ウェルズ・ファーゴがやはり13.5ドルから15ドルへの時給の引き上げを表明しています。今後各業界に時給引き上げの動きが波及すれば、個人消費の底上げに繋がる効果が期待されます。

時給ではなく1,000ドル(日本円で11万円)のボーナスを支給する計画の企業もあります。バンク・オブ・アメリカ、コムキャスト、AT&Tなどですが、支給が12月ならばクリスマス商戦にも好影響を与えるでしょう。

今回の減税は10年間で1.5兆ドル(日本円で165兆円)という超大型の税制改革だけに、株式市場の期待は高まっています。市場関係者の中にはニューヨークダウ3万ドル乗せを予想する声もあり、当然東京市場にも追い風となります。

北米主力のトヨタ、ホンダがトランプ減税関連の本命株

日本株で恩恵を受ける銘柄とは?では、日本企業でトランプ減税の恩恵を特に受けるのはどの企業でしょうか。ズバリ、トヨタ自動車(以下トヨタ、東証1部・証券コード7203)ではないでしょうか。トヨタは現在海外比率が75%で、大半を海外で稼いでいるためです。2021年には米国工場を稼働させる予定で、今後の展開を考えるとこの減税は大きなプラス材料になるでしょう。2018年3月期は最終利益で2兆円大台突破の見込みを発表しています。

同じように本田技研工業(以下ホンダ、東証1部・証券コード7267)も海外比率87%で、北米を主要な収益源としていることから恩恵は大です。こちらはNHKの報道で2018年3月期の最終利益がトランプ減税効果でこれまでの予想を4,000億円上回り、1兆円に達するとの見通しが示されました。

参考までに日本車全体の2016年の地域別輸出台数は下記のようになっています。

●2016年の四輪車地域別輸出台数データ(日本自動車工業会調べ)
1 北米 189万8,913台
2 欧州 81万8,931台
3 アジア 58万6,954台
4 中近東 50万389台
5 大洋州 39万3,457台
6 中南米 29万4,378台
7 アフリカ 13万4,497台
8 その他 6,578台

ご覧のように北米が2位に100万台以上の差を付けて、圧倒的なシェアを占めています。今後トランプ減税による企業業績の向上に伴う賃金上昇が続けば可処分所得が増え、自動車の輸出台数が増える可能性は大です。その恩恵を受けるのが北米輸出比率の高いトヨタであり、ホンダなのです。両社は株価的にも投資妙味大です。自動車株は為替相場に左右されやすいため、割安に放置される傾向にあります。両社のデータを比較してみましょう(2018年2月6日現在)。

・トヨタ
予想PER 12.37倍
実績PBR 1.17倍
予想配当 210円
予想配当利回り 2.88%

・ホンダ
予想PER 11.5倍
実績PBR 0.89倍
予想配当 96円
予想配当利回り 2.52%

トランプ減税効果がすでに発現しつつあるホンダですら11.5倍という現状の株価を考えると、今が投資のチャンスと考えてよいでしょう。

企業の設備投資拡大で機械株にも恩恵が

米国企業の設備投資拡大は当然日本の機械メーカーにも恩恵をもたらします。機械は自動車に次いで海外比率の高い業種だからです。日本製品は品質の高さから米国製品にもなくてはならない存在だけに、海外比率の高いメーカーの需要増が期待できます。

工作機械、電気機械で注目したい具体的な銘柄としては、工作機械用数値制御装置世界首位のファナック(海外比率78%)、セラミックコンデンサー世界トップメーカーの村田製作所(同92%)、電子部品大手で売り上げの6割が自動車関連のアルプス電気(同80%)、HDD用精密小型モーター世界首位の日本電産(同84%)、建設機械世界2位で今期坑内掘削を米国向けに強化する方針のコマツ(同78%)などがあげられます。

いずれも海外比率が極めて高く、世界トップクラスの技術を持つメーカー群ですので、今後もトランプ減税効果が表れるにつれ、買われる場面がありそうです。村田製作所やアルプス電気は、アップル関連銘柄という側面もありますので、アップルの動向に注目する必要があります。

金利上昇による日米市場の調整が懸念材料

ただ、株式市場にとって懸念材料もあります。長期金利の上昇によって調整が長引くことです。米雇用統計で賃金の上昇傾向が顕著になり、金融当局が景気の過熱感を抑えるために利上げを急ぐのではないかとの見方が台頭しています。この金利上昇の流れを受けてニューヨーク市場が2月5日に1,175ドル安と史上最大の下げ幅を記録、翌日の東京市場も前日(592円安)に続いて1,071円安と大幅続落となりました。

今後の展開としては、長期金利の上昇による企業の資金調達コストの上昇による業績の悪化懸念と、トランプ減税効果への期待がしばらく綱引きする形になりそうです。この調整を押し目買いチャンスと見るか、さらなる下落への危険信号と見るかは、投資家それぞれの判断次第です。
これがニューヨークダウ3万ドル、日経平均3万円への踊り場であってくれればよいのですが……。

トヨタ自動車の株価診断

株価 7,286円(2018年2月6日終値)
株価位置レシオ=75.7%で「高値圏」。
予想1株配当=210円
予想PER(株価収益率)=12.37倍
実績PBR(株価純資産倍率)=1.17倍

自動車最大手で、日本株の時価総額第1位。日本株では代表的な指標銘柄の1つです。トヨタ銀行といわれるほどの強固な財務基盤が強みで、業績は安定しています。2月6日には2018年3月期の通期決算見通しを上方修正。最終利益は2兆4,000億円と過去最高益を更新する見込みです。

株価は、2017年4月14日の5,670円を底に、市場全体の上昇とともに2018年1月18日に7,806円の昨年来高値を付けました。市場が調整に入った現在も株価位置レシオは75.7%と高値圏を維持しています。予想PERが12.37倍と依然として割安の状態にあることから、まだ上昇余地は十分にあると考えられます。為替相場が円高傾向にあるのが懸念材料ではあるものの、2018年3月30日まで2,500億円を上限に自社株買いを実施しており、株価下支え効果が期待できます。

株価的には超大型株のため、急騰するタイプの銘柄ではありません。短期投資ではそれほど妙味はないので、好業績・高配当を期待して長期保有するのがおすすめです。典型的なNISA(少額投資非課税制度)向き銘柄といってよいでしょう。
トランプ減税効果に期待して、投資方針は「買い」とします。

※「株価位置レシオ」とは、年初来高値、年初来安値と比較して、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。