全国展開ドラッグストア展4社の業績比較

大量出店が続いているドラッグストア。かなり多くの地域で展開しており、今ではいたるところに出展されています。そんなドラッグストアですが、過剰出店が続き、今では飽和状態となっています。

・ドラッグストアの現状について
・各ドラッグストアの違いや業績
・各ドラッグストアはどのような株主優待を提供しているのか
・おすすめのドラッグストア株

というのはドラッグストア株に興味がある方なら気になるところかと思います。今回は各ドラッグストアについての概要や業績、株主優待などについて解説していきます。ドラッグストア株に投資する際の参考にしてみてください。

ドラッグストアの現状について

ドラッグストアはM&Aによって大手の寡占が進んでいます。体力のない中小規模のドラッグストアは大手のドラッグストアによって吸収されています。全国展開している大手のドラッグストアは下記の4社です。

・ウエルシアHD
・ツルハHD
・マツモトキヨシHD
・サンドラッグ

ドラッグストアの企業数は2003年には650社を超えていましたが、2016年には450社を下回っています。反対に店舗数は増加傾向で2003年には約1.4万店舗でしたが、2016年には約1.9万店舗と大きく伸ばしました。大手企業の買収が進んだ結果でしょう。近年はインバウンド需要などにより業績は好調です。一時期よりはインバウンド需要は落ち着いたものの、高齢化により薬への需要は底堅いものとなる可能性が高いです。

収益のメインは調剤、医薬品

ドラッグストア業界の激しい競争が続く中で勝ち残る企業とは?ドラッグストアは食品や日用雑貨がスーパーより安い価格で販売されているのを見かける方が多いと思います。どうしてあれほど安い価格で販売できるかというと「食品や日用雑貨は集客目的だから」です。つまり安い食品や日用雑貨で顧客を集めて、利益率が高い調剤、医薬品で収益をあげるのが事業スタイルということです。大手のドラッグストアの売上高、粗利益構成比は下記のとおりです。

【売上高構成比】
調剤 21%
医薬品 21%
化粧品 23%
日用雑貨 21%
食品 14%

【粗利益構成比】
調剤 26%
医薬品 28%
化粧品 23%
日用雑貨 16%
食品 7%
※東洋経済出展

売上高では35%を構成している日用雑貨・食品が粗利益では23%と大きく売上高を下回っている一方で、売上高では42%を構成している調剤・医薬品が粗利益では54%と大きく売上高を上回っています。様々な商品が売られていますが、あくまで収益の中心は「薬」ということになります。

大手4社の違いを見分けて投資判断を

似たような商品を販売しているので大手のドラッグストアの違いがよく分からないという方も多いかと思います。この章ではドラッグストアの違いについてみていきましょう。

業界売上高1位のウエルシアHD

ドラッグストアの中で売上高ナンバーを誇るのがウエルシアHDです。2016年度の決算は下記のとおりです。
売上高 6,231億円
営業利益 240億円
経常利益 257億円
純利益 144億円

売上高構成比は医薬品38%、化粧品18%、日用雑貨16%、食品21%、その他7%となっています。医薬品が主力のドラッグストアとなっています。薬局部門を強化し、24時間営業やシニアに対応した計画を行っています。

1株当たりの配当金は32円で、株主優待は下記のものを提供しています。
100株以上 3,000円分の商品券
500株以上 5,000円分の商品券
1,000株以上 10,000円分の商品券

またこの株主優待券は新米、栄養ドリンク、WEB利用券、Tポイントに交換することもできます。Tポイントは特に全国各地で利用でき、等価での交換が可能性ですのでウエルシアを利用する予定がない方はおすすめの交換先です。今後はシニア層の取り込みと24時間営業の調剤がどのくらい収益に貢献できるかがカギとなってきます。

店舗数1位のツルハHD

ツルハHDは売上ではウエルシアHDに負けていますが、店舗数では業界ナンバー1を誇ります。2016年度の決算は下記の通りです。
売上高 5,770億円
営業利益 370億円
経常利益 386億円
純利益 244億円
店舗数 1,755店舗

北海道・東北の出店がメインでエムズワンやメディズワンのプライベートブランドの販売や楽天ポイントカードや夢クーポンを利用した販売促進を行い他店との差別化を図っています。売上高の比率は医薬品24%、化粧品19%、日用雑貨32%、食品他25%とドラッグストアの中でも比較的バランスの取れた売上構成比となっています。大手のドラッグストアの中では一番ドラッグストアっぽくない企業といえるでしょう。

利益率の高い医薬品の割合が少ないにもかかわらず、利益率が高い企業です。1株あたりの配当金は140円となっており、株主優待も贈呈しています。100株以上保有の株主に対して下記の株主優待を贈呈しています。
・株主優待カード 精算価格より5%割引
・株主ギフト券 2,500円分

また

1,000株以上保有者は株主優待カードおよび株主ギフト券が5,000円分
2,000株以上保有者は株主優待カードおよび株主ギフト券が10,000円分

となっています。1株当たり14,860円(2017/12/21現在)なので利回りは高くはありません。今後はプライベートブランドの売り上げが今後の経営のカギを握ってくるでしょう。

過去のドラッグストア業界のトップマツモトキヨシ

22年間業界首位だったマツモトキヨシはツルハHDとウエルシアHDの買収攻勢によって、業界3位に転落しました。2016年度の決算は下記のとおりです。
売上高 5,351億円
営業利益 284億円
経常利益 302億円
純利益 201億円
店舗数 1,555店舗

マツモトキヨシは都市部を中心に店舗を展開しています。そのため訪日客の影響をうけやすく、インバウンド需要に業績が大きく左右されます。2015年度はインバウンド需要により大幅な増益となりましたが、インバウンド需要に落ち着きが見られてきた2016年度は売上高微減、経常利益微増にとどまりました。今後は東京オリンピックによる訪日客の増加が期待されていますので、2020年度は増益が見込まれます。東京オリンピック前の2018年度や2019年度に仕込んでおくのも有効な手段かもしれません。

マツモトキヨシの商品別売上高比率は下記の通りです。
医薬品 32%
化粧品 39%
日用雑貨 19%
食品 10%

マツモトキヨシは女性をターゲットとした店づくりを行っているため、ドラッグストアと名前がついていますが、実はメインとしているのは化粧品です。1株当たりの配当は95円で株主優待は年に2回下記のとおり贈呈しています。
100株以上 2,000円分の商品券
500株以上 3,000円分の商品券
1,000株以上 5,000円分の商品券

「女性」と「訪日客の増加」が今後のカギとなってくるでしょう。

ローコスト体制で利益率の高いサンドラッグ

東京西部に強みを持つのがサンドラッグです。ローコスト体制に定評があります。2016年度の決算は下記のとおりです。
売上高 5,283億円
営業利益 340億円
経常利益 348億円
純利益 233億円
店舗数 1,070店舗

上記の大手3社のドラッグストアと比較すると、売上高、店舗数ともに最低ですが、営業利益はツルハHDに次ぐ2位となっています。徹底したローコスト経営のため、利益率は高めです。1株あたりの配当は100円で株主優待は5,040円相当のプライベートブランドのヘアケアセットとお米券3kg分です。物価や人件費が増加している中でローコスト体制をどこまで維持できるかがカギとなってきます。

今回はドラッグストア株について解説してきました。ポイントをまとめますと

・M&Aにより1社あたりの規模は拡大傾向、今後も拡大が続く可能性が高い
・インバウンド需要による影響もあり、業績は好調
・どの企業も利回りはそこまで高くない

個人的なおすすめ株としてあげたいのが、マツモトキヨシです。理由が
・業界1位に返り咲くために企業努力をしてくると予想される。
・東京オリンピックの訪日客増加の影響を特に受けやすい
という2点があげられます。

この記事をドラッグストア株を投資する際の判断材料にしていただけると幸いです。