観光地としての四国が改めて見直されています。これまでの観光スポットはもちろん、地元から新たな魅力発信によって国外そして世界から観光客を呼び込むことに成功しています。その代表的なエリアはしまなみ海道です。四国の愛媛県今治市から広島県尾道市を結ぶ約50kmの自動車道と合わせて自転車道が整備され、風光明媚なサイクリングロードを楽しむことができます。アメリカのテレビ局CNNによる世界7大サイクリングロードへの選定や、国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」の開催によってサイクリストの聖地として知名度が一気に上がりました。ここでは、愛媛県を中心にサイクリングや村上水軍をキーワードに景色の美しいしまなみ海道がどのように一大観光地となり地元に経済効果をもたらしているかをまとめます。
愛媛県知事としまなみ海道サイクリング
しまなみ海道がサイクリストの聖地とまで呼ばれるようになったきっかけは2014年までさかのぼります。愛媛県の中村知事が趣味のサイクリングと観光立県を結びつけられないかを模索していた経緯で、2014年1月、日本マイクロソフトと地域活性化のプログラムをスタート。「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を公開し、サイクリングの愛媛県としての発信を始めます。10月には広島県と「サイクリングしまなみ」を開催して、成功を収めました。日本最大級の国際サイクリング大会がしまなみ海道で開催されたことによって、自転車としまなみ海道がセットで広く知られるようになりました。
中村知事は就任後、世界最大の自転車メーカーである台湾のジャイアント社と交渉し、自転車文化を愛媛県で広めることを約束。やがて創業者自らしまなみ海道をサイクリングするイベントへと発展し、注目を集めます。
こうして日本はもちろん台湾のサイクリストから、多島美のしまなみ海道を走るサイクリングの魅力が広まっていき、今では世界中のサイクリストをはじめ一般の観光客もレンタサイクルを利用してサイクリングを楽しむ姿は日常的なものになりました。
台湾観光客の急増と地元の対応
海外からの観光客が増加しているしまなみ海道。とくに訪日外国人観光客で目立つのは台湾、香港、インドネシア、シンガポールといったアジア圏です。とりわけ台湾からの観光客はしまなみ海道沿線の島でよく見かけます。2016年には台中市訪問団がしまなみ海道のサイクリングを楽しみ、帰国後さらに台湾でのしまなみ海道人気がたかまりました。しまなみ海道周辺の飲食店や観光施設では急増する台湾人観光客のため、台湾人を講師に招いての中国語講座や中国語によるメニュー併記、台湾人の考え方や味覚を学ぶセミナーなど、迎える側としておもてなしの向上に努める動きが高まっています。
「サイクリングしまなみ」の経済効果
愛媛県に本店を置く地方銀行の伊予銀行が持つ「いよぎん地域経済研究センター」によれば、2016年に開催された国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ2016」での経済効果は5億3156万円となりました。直接効果は1億9853万円、間接効果は10億854億円であり、サイクリング大会そのものの経済波及効果は合わせて3億円を超し、地方イベントのなかでも大きな成果を残しています。「サイクリングしまなみ」は2016年で3回目の開催で、広島県との共催もあり年々サイクリストからの人気も高まっています。
しまなみ海道周辺ではサイクリストのための施設整備も進んでいます。自転車の持ち込みが可能な宿泊施設の建設、道の駅での駐輪場やサイクルスタンドの整備、電動アシスト自転車やタンデム自転車を含めたレンタサイクルの拠点の増設など、一般の観光客が自転車を持参しなくても気軽に楽しめるサイクリングの一大エリアと変化しました。こうした地元の努力によってしまなみ海道の四国側の拠点である今治市では外国人宿泊者数が年を追うごとに増加し、2014年には1万人を突破しました。また、しまなみ海道のレンタサイクルの利用者も2013年には8万人程度だったものが翌年2014年には11万6千人を超えるなど、しまなみ海道がサイクリストの聖地として情報発信して来た成果は着実に上がっています。
しまなみ海道の観光スポット
サイクリストを始め観光客に人気の観光スポットがしまなみ海道周辺には多数点在しています。そのなかからとくにおすすめのものをご紹介します。
広島県
千光寺公園(尾道市)
尾道を代表する観光地の一つで、日本桜名所100選。春は桜の名所として、秋は全国トップレベルの菊花大会の開催地として多くの観光客が訪れます。公園は山の中腹から山頂にかけて広がり、尾道や向島の景色が楽しめます。
平山郁夫美術館(尾道市瀬戸田町)
日本画家として活躍した平山郁夫画伯の生まれ故郷に建てられた美術館。少年時代の習作から最近の代表作まで平山氏の活躍がまとめて鑑賞できます。
愛媛県
亀老山展望公園(今治市吉海町)
しまなみ海道が走る大島にある標高307.8m、の頂上付近に広がります。パノラマ展望台ブリッジからは来島海峡と来島海峡大橋、石鎚山がセットで見渡せるしまなみ海道を代表する美しい景色です。夜には来島海峡大橋のライトアップも楽しめます。
よしうみバラ公園(今治市吉海町)
広大な敷地には400種類のバラが植えられていて、5月から12月までバラの開花を楽しむことができます。暑い時期にはバラのソフトクリームがおすすめです。
しまなみ海道関連銘柄情報
ありがとうサービス(3177)
愛媛県今治市に本社を置く飲食店やリユース店の経営企業。ファミリーレストランやハンバーガーチェーンといった外食産業のほか、ブックオフやハードオフなどのリユース店のフランチャイズ展開もしています。エリアは四国、九州、沖縄。サッカー日本代表の岡田武史元監督が教育担当顧問をしていることでも知られています。2017年8月にはありがとうサービス夢スタジアムが完成し、社会活動にも力を入れています。2017年1月に3,200円を突破していたが3月に2,700円台にまで下落、その後、堅調な推移が続き2017年12月に株価3,000円台まで回復中です。
積水ハウス(1928)
広島に本社を置く積和不動産中国をグループ傘下に収める不動産企業。しまなみ海道の活性化で、新築の住宅やマンション建設、リフォーム増加が見込まれます。鉄骨メインの住宅シェアトップで、戸建、賃貸、分譲、マンションに強みを持つ建設業者です。上場は1970年。2017年12月現在の株価は2,000円台で小刻みな値動きを続けています。
JR四国(非上場)
しまなみ海道のサイクリングブームを受けて、2017年9月から松山間ー今治駅間で「サイクルトレインしまなみ号」の運行開始。自転車をそのまま持ち込め、サイクリストの輪行利用拡大を目指す。
ANAホールディングス(9202)
しまなみ海道の愛媛側の空の玄関口、松山空港で羽田便、伊丹便に根強い人気。格安航空会社ピーチ・アビエーションも傘下に持っています。航空会社として国内線、国際線ともに日本のシェアトップを誇る空運業者です。株価は好調な推移を見せており、2017年初3,000円台だったところ、右肩上がりで12月には4,500円まで値上がり、12月19日現在、4,700円前後で取引されています。