2017年12月13日、宅配便大手佐川急便(以下、佐川)の親会社にあたる、SGホールディングス(東証1部・証券コード9143)が新規上場しました。増え続ける荷物量に加えてドライバー不足が重なり、業界全体が窮地に陥っている厳しい状況下での上場となりました。その中でヤマト運輸(以下、ヤマト)が運賃値上げという大ナタを振るい、佐川、日本郵便も追随値上げを発表。宅配便業界は新しい時代に入ろうとしています。そこで今回は、株式市場でも揃い踏みとなった宅配便御三家の業績と投資価値を徹底比較します。

超寡占化の宅配便業界、他グループの付け入る隙なし

はじめに宅配便業界の現状を見てみましょう。大手3社の2016年度の取扱量は以下の通りになっています。

●宅配便大手3社の2016年度取扱量一覧(カッコ内は前年比)
1 ヤマト運輸 18億6756万個(+7.9%)
2 佐川急便 12億1821万個(+1.7%)
3 日本郵便 6億3242万個(+9.1%)

この業界は典型的な寡占市場で、上位3社で実に93.4%のシェアを占めています。これだけシェアが集中していると、この中に割って入るには相当な投資が必要になるため、他グループに付け入る隙はほとんど無いといってよいでしょう。宅配便業界は通販市場の拡大に加え、メルカリなどのオークションサイトの利用者も増えていることから、需要は旺盛ですが、ドライバーの数が追い付かない状態です。

注目のSGホールディングスの業績は?

では次に、3社の2017年3月期の業績を比較してみましょう。

宅配便大手3社の2017年度業績比較(カッコ内は前年比)

ヤマト運輸
営業収益 1兆4,668億5,200万円(+3.6%)
営業利益 348億8,500万円(-49.1%)
経常利益 348億8,400万円(-49.8%)
純利益 180億5,300万円(-54.2%)

SGホールディングス
営業収益 9,303億500万円(-1.4%)
営業利益 494億(-8.4%)
経常利益 512億円(-2.6%)
純利益 284億円(-16.3%)

日本郵便
営業収益 3,038億800万円(-2.0%)
営業利益 2,269億6,400万円(-1.9%)
経常利益 2,288億3,100万円(-1.8%)
純利益 2,070億1,500万円(+119.5%)

一般企業の売上高にあたる営業収益では、ヤマトが小幅増収を果たした他は、2社とも小幅減収で、その差は広がっています。ヤマトがトップ企業の底力を示した形です。しかし、利益面になるとまったく逆の結果となり、佐川、日本郵便がわずかな減益幅だったのに対し、ヤマトは営業利益・経常利益とも50%近い大幅減益となっています。新勤怠管理システムの導入費用や、ドライバーへの残業代未払い問題が業績の悪化に繋がった形です。

最終的に株主に還元される純利益では、ヤマト、佐川が2ケタ減益だったのに対し、日本郵便は+119.5%と前期の2倍以上の利益をあげ、明暗が別れました。これはゆうパックの取扱量増加に加え、郵便料金の値上げ効果が利益を押し上げたためです。新規上場のSGホールディングスとしてはすべての利益がマイナスで、厳しい船出になったといえそうです。

ヤマトの取扱量抑制で、日本郵便に追い上げのチャンス

競争激化する宅配便大手3社を徹底比較ところで、最近話題になったのが、業界最大手のヤマト運輸が荷物の取扱量の抑制策に乗り出したことです。最大の目的は配達する従業員の負担軽減であることはいうまでもありません。残業代未払いに対する批判や、社会の働き方改革の流れも影響し、取扱量の抑制に取り組まざるを得なくなったのが実情です。

そのためにヤマトが打ち出した具体的な方法が運賃の値上げでした。値上げによる需要減を料金改定分による増収で補い、配達員の取扱個数を減らそうというのです。運賃改定は10月1日からすでに実施していますが、徐々に荷物の取扱量は減ってきており、一定の効果は出ています。3社の値上げ幅は下記の通りです。

宅配便大手3社の改定運賃一覧(カッコ内は値上げ幅)

ヤマト運輸
60サイズ 864円→1,015円(17%)
100サイズ 1,296円→1,468円(13%)
160サイズ 1,944円→2,138円(10%)

佐川急便
60サイズ 864円→864円(0%)
100サイズ 1,404円→1,468円(5%)
160サイズ 1,930円→2,120円(10%)

日本郵便
60サイズ 840円→950円(13%)
100サイズ 1,280円→1,410円(10%)
160サイズ 1,930円→2,120円(10%)

業界2位の佐川も11月21日から値上げを実施、ヤマトの発表後という後出しの有利性を生かし、宅配便サイズとして需要の多い60サイズを値上げ無し、100サイズを5%値上げなど、個人向けサイズの値上げ幅縮小という独自性を出しています。ただ、営業拠点の少なさがネックになっており、今後個人の需要を取り込むには、営業所増設など利便性の向上が課題になります。

一方、運賃値上げを2018年3月1日まで延ばした業界3位の日本郵便にとっては上位2社との差を詰める千載一遇のチャンスがやってきました。すでにヤマトと佐川から値上げを通告された顧客が日本郵便に乗り換える需要が発生しています。
しかし、日本郵便もいずれ値上げすればまた同じ条件になるので、他社との差別化効果は一時的との見方もあります。それでも郵便局を利用した営業支店網は他社を圧倒しており、今後は個人の需要を上位2社からどれだけ奪えるかに掛かってくるでしょう。

宅配便大手3社の株価指標比較

最後に投資先を決めるのにもっとも重要な、株価指標で比較してみます。

ヤマトホールディングス(ヤマト運輸親会社)
・株価=2,347.5円(2017年12月18日終値)
・年初来高値=2,584.5円(3月3日)
・年初来安値=2,081円(11月20日)
・株価位置レシオ=53.0%
・予想1株配当=27円
・予想配当利回り=1.15%
・予想PER(株価収益率)=80.39倍
・実績PBR(株価純資産倍率)=1.77倍

SGホールディングス(佐川急便親会社)
・株価=2,038円(2017年12月18日終値)
・年初来高値=2,222円(12月15日)
・年初来安値=1,867円(12月13日)
・株価位置レシオ=48.2%
・予想1株配当=32円
・予想配当利回り=1.57%
・予想PER(株価収益率)=19.77倍
・実績PBR(株価純資産倍率)=2.12倍

日本郵政(日本郵便親会社)
・株価=1,305円(2017年12月18日終値)
・年初来高値=1,518円(1月5日)
・年初来安値=1,232円(11月16日)
・株価位置レシオ=25.5%
・予想1株配当=50円
・予想配当利回り=3.83%
・予想PER(株価収益率)=14.68倍
・実績PBR(株価純資産倍率)=0.39倍

結局、一番投資妙味があるのはどの銘柄か?

株価位置レシオで見ると、ヤマトが53.0%、SGホールディングスが48.2%でそれぞれ「中間圏」、日本郵政が25.5%で「安値圏」の位置にあり、日本郵政の安さが際立っています。
ヤマトは業績の悪化からPERが80倍を超えており、PBRも1.77倍と割安感は無いため、新規での投資妙味はほとんど感じられません。今後値上げ効果が浸透し、業績回復を待っての投資が無難でしょう。新規上場のSGホールディングスはPER19.77倍とまずまずですが、PBRが2.12倍となっており、実態以上に買われている感はあります。新規上場のご祝儀的相場の色彩が強く、業績を考えると、そう大きな上昇は見込めないと思われます。

上位2社とは反対に、日本郵政は割安感が顕著です。PERが14.68倍と東証の平均以下、PBRに至ってはわずか0.39倍にしか買われていません。配当利回りも上位2社が1%台に対して、3.83%の高利回りとなっており、インカムゲイン狙いの投資にはうってつけです。上場来高値1,999円(2015年12月7日)から相当下押ししていることもあり、下値不安も少なく3社の中では日本郵政が一番投資妙味があると判断できます。

※「株価位置レシオ」とは、年初来高値、年初来安値と比較して、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。