決算書を基にした様々な分析指標がある

【ニュースで報道される企業業績】投資先の成長性を見極めるための利益・損益の基礎
【業績の理解に深みを増す】資産・負債など企業の財政をまとめた貸借対照表の基礎
【損益計算書より資金繰りが明確】決算で報告するキャッシュ・フロー計算書とは

上記の基礎解説より損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書といった決算書を理解しておくと、企業業績が理解できるようになります。投資家としては、決算書から投資先に値するかまで分析できる必要があります。株価推移の報道などでたびたび話題になる有名な指標を重点的に紹介しますが、投資先の見極めに使えることが重要です。

最近企業が高くしようとしているROEと関連するROA

低PBR・高ROEは「買い」という理由と他経営分析指標一時期ROE経営という言葉がはやり、今でもROEを意識している企業は少なくありません。ROEとは自己資本利益率を意味し、当期純利益を自己資本で割ったものです。自己資本とは、貸借対照表・純資産の部の「株主資本」(資本金や利益剰余金など)と「その他包括利益累計額」を足したものです。ちなみに自己資本比率は自己資本を総資産額で割ったものですが、総資産―負債=純資産で自己資本はこの一部ですので、この指標が低いと負債が多いと見られます。少ない資本で利益をあげている企業は、効率的に稼いでいると言えます。

2014年8月に経済産業省より発表された報告書で、各企業は8%を目指して経営すべきとされました。ただROEの高い企業は、分母の自己資本が低いことも考えられ、ROEが高くても自己資本比率が低い企業は要注意です。純利益を総資産額で割ったROA(総資産利益率)という指標もあり、ROE×自己資本比率でも求められます。ROEは8%以上、自己資本比率は50%以上が望ましいことからすると、ROAは4~5%あるのが望ましいということになります。

【業績の推移を比較】2018年3月期中間決算 ソニー・トヨタ・ソフトバンクを分析

で業績比較した3社を例にとって分析してみましょう。

ソニー・トヨタ・ソフトバンクの各指標

※①②③の単位は百万円
①は連結経営成績の当社(親会社)株主に帰属する四半期純利益
6カ月分の利益のため2倍にして12カ月相当額に換算
②は連結貸借対照表の純資産総額から非支配持分を除いたもの
③は連結財政状態の総資産

ROEで見れば、ソニー・トヨタが8%以上と理想的な数字でソニーが最も高いです。しかし自己資本比率を見るとソニーが一番低く、トヨタが36.32%と抜きんでています。このためROAで見るとトヨタが4%台と一番高くなり、理想的な数値となります。ソニーは2014年3月期・2015年3月期に赤字を出しているため、利益の積み重ねに当たる「利益剰余金」が自己資本全体の半分以下しかなく、安定的に利益を出して利益剰余金の比率が高いトヨタ・ソフトバンクと事情が異なります。ソニーは2018年3月期中間決算の業績が良く先行きは明るいのですが、過去の状況から財政状態に不安材料があります。財政状態もあわせれば、ROAも高いトヨタ自動車が安定しています。ソフトバンクは前期比で純利益が悪化している点や、有利子負債が多く自己資本比率が低いことから3社の中ではROE・ROAとも低調です。

割安株を見つけるためのPBR・PER

投資先選びに使う有名な指標がPBR(株価純資産倍率)・PER(株価収益率)で、これらは低いほうが割安株として買い銘柄とされています。PBRは株価を1株当たり自己資本で割ったもの、PERは株価を1株当たり当期純利益で割ったものになります。株価が低い=割安ですが、もう1つの分母が問題です。資本金などを含む純資産の額が株価時価相当額とも解約できますので、PBRが1未満(つまり株価<純資産)であれば株価が割安という理屈です。同様にPERは利益の割に株価が低い銘柄は買いということで、割安と言われている基準は10倍~40倍まで幅広いのですが、10倍未満は間違いなく割安と言えます。

ソニー・トヨタ・ソフトバンクのROE・ROA

※①は2017年9月末(30日は土曜のため29日)時点での株価
②は連結経営成績の1株当たり当社(親会社)株主に帰属する四半期純利益
6カ月分の利益のため2倍にして12カ月相当額に換算

PBR=1株当たり株価÷1株当たり自己資本であり、PER=1株当たり株価÷1株当たり純利益と、ROE=純利益÷自己資本をかけても計算できます。まずPBRを見ると、株高傾向が続いたのが影響したため各社とも1倍を上回り割高ですが、トヨタ自動車は1に近く最も割安とは言えます。PERはトヨタが10倍を下回っていて最も低いですが、12.5倍のソニーも割安なほうです。一方50倍台のソフトバンクは割高と言えます。この3社の相対比較で言えばPBR・PERとも、トヨタ自動車<ソニー<ソフトバンクとなっており、この中から選択するのであればトヨタ自動車と言えます。ソフトバンクは2018年3月期中間決算の業績発表後に株価が暴落しましたが、PBR・PERの割高感やROA・ROEの低さが効いているとも解釈できます。

その他有力な経営分析指標

投資家に配当を多く還元しているかを見る指標として、配当性向・配当利回りという指標があります。この二者は紛らわしいのですが、配当性向=1株当たり配当額÷1株当たり純利益、配当利回り=1株当たり配当額÷株価という違いがあります。決算書から分析できる指標としては配当性向になりますので、ここでは配当性向を例にとってみます。

ソニー・トヨタ・ソフトバンクの配当性向・配当利回り

※①は配当の状況(2018年3月期中間配当実績額)
②は連結経営成績の1株当たり当社(親会社)株主に帰属する四半期純利益
中間配当との比率を見るため、12カ月換算はしない

配当性向は20%以上が望ましいとされ、企業側でも20%・30%などと目標を立てて投資家に還元しようとしています。20%台のトヨタやソフトバンクは理想的な数字ですが、ソニーは低く見えます。ただソニーの場合は、前述のとおり過去2期に赤字を出しており、そこからようやく回復してきたために低いと言えます。昨年の中間配当10円よりは増やしていますが、急激に変えることはできません。今後利益を出し続け増配していけるかを見ていく必要があります。

またROEに代わる指標として、一部の企業がROIC(投下資本利益率)を経営目標としています。株主が出した資本と銀行等が出した借入金を基に、どれだけ営業利益を稼いでいるかを示す指標です。ROEと異なる点は、分子が税引後営業利益となり、分母が株主資本に加えて有利子負債になるという点です。

ソニー・トヨタ・ソフトバンクのROIC

※①②③の単位は百万円
①は連結経営成績の営業利益を12カ月換算(2倍)したもの
②は「借入金」もしくは「借入債務」とつく負債科目の集計
ソフトバンクは流動負債・固定負債の有利子負債を合算
③は連結貸借対照表の純資産総額から非支配持分を除いたもの
ROIC計算において法人税率を30%としたため、税引後営業利益は営業利益の70%

ROICもソニーが高いのですが、ソフトバンクがトヨタを上回ります。営業利益ベースで計算しており、トヨタは営業利益で見ると前期比で減少していることや、逆にソフトバンクは最終利益が前期比で減少していても営業利益では増加している点が影響しています。現段階ではROICはメジャーな指標というほどではないので、参考程度に理解しておくとよいです

経営分析指標のアクセス方法

ここまで計算方法を含めて経営分析指標を説明してきましたが、主要指標の数値自体は株価を参照できるサイトで掲載されています。例えば「Yahooファイナンス」の個別銘柄情報にある「業績予報→概要・配当」や日経新聞サイトからたどれる「日経会社情報DEGITAL」でPER・PBR・ROEなどはわかります。そのため自分で電卓叩いて計算する必要はない指標ですが、意味するものは理解して頂きたいのです。またサイトによっては

・PER・ROEにおける「純利益」の性格
・PBRにおける「自己資本」の計算時点
・PER・PBRにおける「株価」の時点

などが異なることがあります。例えばPER・ROEの純利益は通期予想(2018年度内であれば2018年3月期)を使うことが多いですが、会社予想・アナリスト予想等の違いがあり、「Yahooファイナンス」では両方載せています。またPER・PBRにおける「株価」は、「日経会社情報DEGITAL」ではリアルタイムに反映されます。このような違いを理解するために、各指標の意味を把握しておく必要があります。