テクニカル指標にはトレンド系とオシレーター系があります。それぞれ代表的なものとして、トレンド系は移動平均線、オシレーター系はRSIなどがあります。一般的にトレンド系はトレンドの状態を理解する手助けやトレンド相場でのエントリーポイントを教えてくれます。一方オシレーター系は、買われすぎや売られすぎを教えてくれるため、レンジ相場に適しています。

今回紹介するウィリアムズ%Rはオシレーター系の指標です。0%から―100%の間で買われすぎ、売られすぎを判断してくれます。おおよそ―20%以上では買われすぎ、-80%以下では売られすぎを表してくれます。レンジ相場においてこの水準にあるときに逆張りを行えば、利益が出る可能性が高くなります。

ウィリアムズ%Rとはラリー・ウィリアムズによって開発されたテクニカル指標です。ラリー・ウィリアムズとはコンテストで自己資金を113倍にまで増やしたことで知られています。ウィリアムズ%Rの計算式を見ておきます。

ウィリアムズ%R=(過去n日の最高値―当日の終値)/過去n日の最高値―過去n日の最安値)×100

nには14日間を用いることが多いですが、10や20日間を用いることも多くあります。この計算式をもとに、ローソク足ごとのウィリアムズ%の値が決定します。

もちろん、計算式は知らなくても使うことはできますが、計算式を知っておいた方がこの手法をより深く理解できるでしょう。計算が苦手という人は言葉で覚えておくことをお勧めします。この式から読み取れることは分析期間nの安値から高値のうち、現在地が高値から何%の位置にあるのか、ということを表しています。

他のオシレーター系指標との違い

先ほど説明したようにオシレーター系指標は買われすぎ、売られすぎを判断してくれます。ウィリアムズ%と似た指標にはRSIやストキャスティクスがあります。これらの中でウィリアムズ%Rが持つもっとも大きな特徴は反応しやすいということです。ウィリアムズ%Rのラインは激しく上下するので、その分エントリーのサインが出やすくなります。

このような特徴があるため、エントリーのサインが出てもダマシと言われる現象が起きることが多くなります。買われすぎのサイン―20%以上の値が出たから逆張りの売りでエントリーしたものの、値下がりしなかったときがその一例です。このように、値動きに反応しやすく、ダマシが多いということを頭に入れておきましょう。

レンジ相場での逆張り

ウィリアムズ%Rが有効な相場とはレンジ相場です。ここでレンジ相場とはどんな相場なのか、振り返っておきましょう。

相場にはトレンド相場とレンジ相場があります。さらにトレンド相場には上昇トレンド相場と下降トレンド相場があります。つまり基本的にはこの3種類で相場が構成されていることになります。トレンド相場は上方向か下方向の一方に向かって動いている相場のこと、レンジ相場は一定の価格帯で上に行ったり下に行ったりしている相場です。

ウィリアムズ%R1

上のチャートはドル円15分足です。価格の軌跡であるチャートを見ると、価格は上下に行ったり来たりしていることが分かります。つまりレンジ相場であることが確認できます。

ウィリアムズ%R2

このようにレンジ相場の上限と下限に水平線を引くと、どの価格帯で値動きしているかが分かりやすくなります。

この場合、一部はみ出しているところもありますが、下限が113.600、上限が114.300のボックス内で値動きを繰り返していることが分かります。この上限、下限付近では、値が反発する可能性が高くなります。つまり、上限下限付近で逆張りのエントリーをすれば、利益を得られる可能性が高くなると言えます。

これがレンジ相場での逆張りの狙いです。

ウィリアムズ%Rを使った実際の取引

それではチャートを見ながら、ウィリアムズ%Rを使った実際の取引について見ていこうと思います。

ウィリアムズ%R3

先ほどと同じ時間のドル円15分足のチャートです。ローソク足の下にあるのがウィリアムズ%Rのラインです。

まずはエントリーポイントについて考えてみましょう。先ほども説明した売られすぎのサインである―20%以上、買われすぎを表す-80%以下の場所を探します。

ウィリアムズ%R4

黄緑色で囲った箇所が―20%以上、-80%以下の場所です。これらがエントリーポイントを知らせてくれるものですが、かなり多くの場所でサインが出ていることが分かります。

これらの箇所でエントリーして利益が出るでしょうか。今回のチャートでは、黄緑色で囲った箇所ではおよそ7割~8割の確率で利益をもたらしてくれることが確認できます。予想と反対方向に動けば素早く損切りし、利益はなるべく伸ばすようにすれば、しっかりと利益をもたらしてくれるはずです。

トレンド相場で使いにくい理由

次にトレンド相場でウィリアムズ%Rを使うことを考えてみましょう。

ウィリアムズ%R5

再びドル円15分足のチャートを見てください。今度はトレンド相場となっています。途中で上昇トレンドから下降トレンド相場へとトレンドの転換が起こっています。

ウィリアムズ%Rを見ると、上昇トレンドのときに買われすぎのサイン、―20%以上が出ていることが確認できます。しかしレンジ相場のように、このサインを目安にエントリーすると、上昇トレンドの波に飲まれて利益を出すことができません。

同様に下降トレンドでは売られすぎのサイン、-80%以下が出ていることが確認できます。このサインを目安にエントリーすれば下降トレンドの波に飲まれて損失を出してしまいます。

このように、ウィリアムズ%Rはある1方向に値動きが続いているトレンド相場では基本的には使うことができないのです。

精度を高めるためには

さて、レンジ相場でのウィリアムズ%Rの使い方は大体分かっていただけたでしょうか。ここまで示した手法は、ウィリアムズ%Rを使う手法の一例に過ぎないので、自分なりのアレンジを加えることが可能です。

それではアレンジを加えながら、精度を高めるためにできることについて考えてみましょう。

1.水平線を引いて併用する

ウィリアムズ%R6

さきほどのようにレンジの上限と下限に水平線を引いておきます。これを併用することによって、ウィリアムズ%Rでの売買サインが出たとき、水平線にタッチして跳ね返ったとき、この2つの条件が同時に発生したときにエントリーすれば制度が高まることが考えられます。

オレンジで丸く囲った場所が2つの条件を満たしている箇所です。いずれの場所でも、エントリーすれば利益が出ていることが分かります。

2.買われすぎ売られすぎの判断基準の変更

一般的にウィリアムズ%Rでの買われすぎの基準は―20%以上、売られすぎの基準は―80%以下とされることが多いようです。しかしこれはあくまで目安に過ぎません。

このため、自分なりの基準を作ってもよいでしょう。例えば、基準を厳しくして買われすぎの基準を―10%以上、売られすぎの基準を―90%以下にするといった工夫が考えられます。

「・他のオシレーター系指標との違い」でも触れましたが、ウィリアムズ%Rはダマシの多い指標と言われています。より極端な買われすぎ、売られすぎの状態になったときだけエントリーすればダマシを防ぐことができるでしょう。

このように自分なりに勝つための工夫を怠らないことがトータルで勝つために必要となります。FXの手法は、すぐに自分のものにはなりませんが、相場の流れを体感して試行錯誤を繰り返していくうちに少しずつ身に付いていくでしょう。過去のトレードを振り返りながら、根気強く取引を続けていくことが精度を高めて勝つためには必要不可欠と言えます。