今回はファンダメンタルズの重要性について説明しようと思いますが、その前になぜ為替レートは動くのかについて簡単に振り返っておきましょう。為替レートが動く要因を一言で言い表すとすれば、それは需給バランスです。例えば円という通貨で考えてみましょう。

円を買いたい人たちは円の価値を上げる力を持ち、円を売りたい人たちは円の価値を下げる力を潜在的に持っています。円を買いたい人たちの力が円を売りたい人たちの力よりも強ければ実際に円の価値が上がっていくことになります。円を買いたい人たち、円を売りたい人たち、この2つの勢力はどのような要因によって生まれるのでしょうか。そしてなぜ買いたい、あるいは売りたいと判断するのでしょうか。

それは主に2つの要因から成ります。

1.テクニカル
2.ファンダメンタルズ

これらの要因から投資家は通貨を買いたい、とか売りたいとか思うわけです。

FXにおいては、チャートを使った分析が盛んに行われています。そのため、どちらかというとファンダメンタルズよりもテクニカルを意識した売買が多くなっています。テクニカル指標もとても豊富で、移動平均線やMACDなど様々な指標を使うことができます。短期売買ではテクニカルの要因によって相場が動くことも多く、とても効果的な分析方法として使われています。

テクニカルの要因で相場が動く要因

それではなぜ、短期的にテクニカルの要因で相場が動くのでしょうか。それは短期的に相場を見ると、実体経済を伴わない投資家の心理によって相場が動くからです。例えば相場が下落すると、売りが売りを呼び、短期的に大幅な下落となることもしばしばあります。投資家がテクニカル指標などから短期的な値動きを予想します。短期的な値動きとは他の投資家がどのような取引をするかによって決まります。テクニカルから他の投資家の行動を予想して、自分も他の投資家と同じ行動を取ることになります。

個人から機関投資家まで大量の投資家たちが、同じような行動を取ると、当然1方向に向かって値動きすることになります。これが短期的にはテクニカルの要因で相場が動く理由です。この場合、オーバーシュートと言われるような売られすぎの状態に陥ってしまいます。しかし、実体経済とは関係なく単に人間の心理によって動いた相場というのは、中長期的に見ると、適正水準に戻っていく働きがあります。

ファンダメンタルズの重要性

その相場の適正水準を決めるのがファンダメンタルズの要因です。つまり、ファンダメンタルズを知るということは現時点での適正価格を知るということでもあります。これがファンダメンタルズ分析を行う上で最も重要なポイントです。それによって短期的な相場変動は、実体経済を伴わず一時的に生じた相場のズレなのか、実体経済を伴った適正水準の変化なのかを見極めることができるのです。

ファンダメンタル分析

上の絵を見てください。イメージとしては直線が適正価格の変化、曲線が実際の値動きです。とてもシンプルな画像ですが、適正価格からブレるように実際の値動きが起こっていることがわかります。上の画は中期的な値動きと捉えてもらうと分かりやすいでしょう。かい離幅を埋めるように中期的には適正水準に戻っていくことが分かります。つまり、直線と曲線のかい離幅がテクニカルの要因によって動いた価格ということになります。もちろん、相場によってはもっと曲線のふり幅が大きかったり、振り幅の間隔が狭かったりします。相場が変動しているとき、その変動がテクニカルの要因によるものなのか、ファンダメンタルズの要因によるものなのか、あるいは両方の要因が働いているのか、これらをしっかりと把握しておくことがとても大切になります。

ファンダメンタルズを使った分析

ファンダメンタルズを知っておくことの重要性が分かったところで、次にファンダメンタルズを使った分析について、少し詳しく見ていこうと思います。ファンダメンタルズとは経済状態を表す指標のことです。例えばアメリカの経済状態を考えてみましょう。アメリカの景気が良くて、今後もアメリカ経済は堅調である、と判断した場合、投資家たちはドルの価値が上がると予想します。その結果ドルは買われてドル高になります。アメリカのように一般的に一国の経済状態と通貨の強さは相関関係にあると言えますが、日本円のように、経済状態が良いほど、通貨が安くなるという場合もあるので、一概に経済状態が良いと通貨の価値が上がるとは限らないので注意が必要です。

さて、それでは市場に参加している投資家たちはどのような基準でその国の経済状態を判断するのでしょうか。考えられるものをいくつか挙げていきます。

1.雇用に関する指標

失業率や雇用統計はその国の経済状態をよく表します。いずれも1国の雇用状態を表しており、失業率が低いほど、その国の経済は好調であるということになります。中でも毎月第一金曜日に発表されるアメリカの雇用統計は為替相場を大きく動かす経済指標としてとても有名です。雇用状況というのは一国の経済状態が反映されていることになります。

2.GDP

GDPとは国内総生産のことです。国内でどれだけ付加価値が生み出されたのかを表します。もちろん、この数値が大きいほどその国の経済が好調であると判断できます。

3. 貿易収支

貿易収支も為替レートに大きな影響を与えます。一般的にある国の貿易収支が黒字になると、その国の通貨は高くなり、赤字になるとその国の通貨は安くなります。例えば、日本の自動車メーカーで考えてみましょう。自動車をアメリカに輸出したとします。輸出するということは、海外の国に自動車を売ったことになります。そのため、輸出先の国から通貨を受け取ることになります。当然受け取った通貨はドルです。しかし、ドルは日本では使えないので、円に交換することになります。すると円の需要が高まって円高になるというわけです。

貿易黒字とは輸出が輸入を上回っている状態なので、その国の通貨レートを高くする働きがあります。貿易黒字か貿易赤字かというのは、ある程度毎年決まっています。例えば日本であれば毎年貿易黒字になっています。そのため貿易黒字であっても円高方向に値動きする要因にはなりません。この場合、昨年との比較や黒字額というのが為替レートを決定付ける要因となります。

4.金融政策

為替レートに大きな影響を与える3つめの要因は政策金利です。最近ではアベノミクスの金融緩和によって、為替レートが大きく円安方向に動いたことは記憶に新しいのではないでしょうか。これは金融緩和によって金利が低下したため、通貨安になったことが原因です。金利が下がると、通貨としての魅力が薄れてしまいます。すると外国への資金流出が起こるため、通貨が売られて円安となります。金融緩和のほか、政策金利の引き下げも同様の効果をもたらします。

ファンダメンタルズとの向き合い方

FXを取引するにあたって、ファンダメンタルズ指標とどのように向き合っていけばよいのでしょうか。FXの取引ツールを開くと、数多くの経済指標が用意されているので、取引の際にはしっかりとチェックするようにしましょう。特に中長期的にはファンダメンタルズの条件によって為替レートが動いていきます。スイングトレードを行う投資家は絶対に見逃せないものです。

また、短期売買では、テクニカル分析のみでの対応も可能ですが、より精度を高めるためにもファンダメンタルズを確認しておく必要があります。短期的な相場の急変時に、それが一時的に起こったトレンドなのか、ファンダメンタルズの条件が変わったから起こったトレンドなのかを見極めることはとても重要です。例えば、相場の急変時にオーバーシュートが起こったことを見極められれば、早めに決済したり、逆張りでエントリーしたり、よりトレードの幅が広がります。

はじめにふれたように、ファンダメンタルズによって、そのときの相場の適正価格を知っておけば、より精度の高いトレードが行えるようになります。