今回はストキャスティクスを使った逆張り手法について紹介していこうと思います。ストキャスティクスとはテクニカル指標のひとつです。ストキャスティクスはテクニカル指標のうち、相場で買われすぎ、売られすぎを判断してくれるオシレーター系の指標にあたります。
トレンド系とオシレーター系の違い
FXの取引ツールを開けば、何十ものテクニカル指標があります。これらは大きく分けて、トレンド系とオシレーター系があるのをご存知でしょうか。トレンド系の指標では、現在どのようなトレンドが発生しているのかを判断してくれます。上昇トレンドなのか下降トレンドなのか、あるいはトレンドの強さを客観的に知ることができます。トレンド系の指標では、トレンド相場でのエントリーポイントや決済ポイントを見極めるのに使うことができます。次の指標が代表的なものとして挙げられます。
・移動平均線
・エンベロープ
・一目均衡表
・HLバンド
など
一方、オシレーター系の指標は、買われすぎ、売られすぎを判断してくれます。トレンドが発生しているか否かに関わらず、そのときどれだけ売買が行われているのかを知ることができます。主にレンジ相場で買われすぎの時には売り、売られすぎのときには買いでエントリーをするポイントの判断材料となります。代表的なものは次の通りです。
・RSI
・RCI
・ストキャスティクス
・ウィリアムズ%R
など
ストキャスティクスとは
ここからはストキャスティクスについて見ていきます。ストキャスティクスは1950年代にチャート分析家のジョージ・レーンという人物によって考案された指標です。他のオシレーター系指標と同様に、現在の価格水準がどれほど買われすぎているのか、売られすぎているのかを示してくれる指標です。特に過去の最安値から、現在の価格はどのポイントにあるのかを知らせてくれます。
まずは具体的な計算式を見ておきます。もちろん計算式は知らなくても、トレードはできますが、知っておいた方がストキャスティクスに対する理解がより深まります。
ストキャスティクスでは%K、%D、スロー%Dという3つの値を用います。
・%K=(当日終値―過去X日間の最安値)÷(過去X日間の最高値―過去X日間の最安値)×100
・%D=(最新の終値―過去X日間の最安値)のY日間の合計÷(過去X日間の最高値―過去X日間の最安値)のY日間の合計×100
・スロー%D=%Dの単純移動平均
次に3つの数値がチャート上ではどのようになっているのかを見ていきましょう。
上のような3本の線がストキャスティクスです。赤色が%K(9)、黄色が%D(3)、青色がスロー%D(3)です。この場合、先ほどの計算式のXには9、Yには3が入ります。それぞれの数値の推移を見ていくと、%K、%D、スロー%Dの順で反応が早いことが分かります。
ストキャスティクスを使うのに向いているのはレンジ相場
ストキャスティクスとはどんな指標なのか大体分かっていただけたと思います。テクニカル指標は、計算方法を理解した上でそれをトレードに活かすことが求められます。どのようにトレードに活かすかを考えるとき、まずはどのような相場でエントリーするのかを考えなければなりません。
ストキャスティクスを使うのに適した相場とは、レンジ相場です。レンジ相場とはある一定のレートの間を行ったり来たりしているような状況です。このような相場で有効なのは逆張りです。例えば、レートがレンジ相場の上限にあるとします。レンジ相場では上限と下限を行ったり来たりするので、上限にあるレートは値下がりしていくと考えられます。そこで、レンジ相場の上限付近にレートがある場合、売りでエントリーすれば利益が出るというわけです。反対に下限付近の場合は、買いでエントリーすれば利益が出る可能性が高くなります。
このようにレンジ相場では逆張りの手法がとても有効になります。それを応用する手法が今回紹介するストキャスティクスでの逆張りです。買われすぎのサインが出たら売りでエントリー、売られすぎのサインが出たら買いでエントリーすれば利益が出ることになります。
トレンド相場でのストキャスティクス
それではトレンド相場で、ストキャスティクスの判断基準を使ってエントリーすることを考えてみましょう。トレンド相場は1方向に値動きするような相場です。そのため、買われすぎのサインが出ているからといって売りでエントリーしても、さらに値上がりして損失を抱えてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
しかしトレンド相場の場合でも、一時的な押し目や戻り(一時的に利益確定などでトレンドと逆方向にレートが進み、再びトレンド方向に戻る動き)の時に、その後再びトレンドに戻る判断には利用できます。ただこの場合は経験も必要ですので、まずはレンジ相場でのストキャスティクスの使い方をマスターしてから、トレンド相場で活用する事を考えましょう。そうすればレンジとトレンドのどちらでもトレードが出来るようになりますので、トレードチャンスは一気に増える事になります。
ストキャスティクスを使った実際のトレード
それではチャートを見ながら、ストキャスティクスを使ったトレード方法について見ていきましょう。
チャートはドル円1時間足です。先ほど少しふれましたが、エントリーするときは、どんな相場であるのかを判断するところからスタートです。チャートを見ると、ある為替レートの間で上下を繰り返しており、おおむねレンジ相場であることが分かります。つまり、買われすぎたら売り、売られすぎたら買い、のオシレーター指標が使える局面と考えられます。
ストキャスティクスはローソク足の下にある3本のラインです。先ほどと同じく、赤色が%K(9)、黄色が%D(3)、青色がスロー%D(3)です。買いのサインと売りのサインはそれぞれ2パターンずつ、合計4つのパターンがあります。それぞれまとめると、以下のようになります。
【買いサイン】
パターン1、%K、%Dが20%以下の時、%Kが%Dを下から突き抜けたとき
パターン2 %D、スロー%Dが20%以下の時、%Dがスロー%Dを下から突き抜けたとき
【売りサイン】
パターン3、%K、%Dが80%以上の時、%Kが%Dを上から突き抜けたとき
パターン4、%D、スロー%Dが80%以上の時、%Dがスロー%Dを上から突き抜けたとき
動きの鋭いラインが緩やかなラインを突き抜けたときが、エントリーのサイン、という風に覚えておけば良いでしょう。そして、20%以下、80%以下という数値は買われすぎ、売られすぎの目安となる水準です。30%と70%を目安にしてもよいですが、レンジ相場で大体この水準にあれば、値が反転する可能性が高くなります。
それではエントリーサインの4つのパターンは、さきほどのチャートではどこにあたるのでしょうか。再びチャートを見ながら考えていきましょう。
それぞれエントリーサインのパターン1からパターン4まで、当てはまる箇所に丸印を付けておきました。
水色:パターン1
青色:パターン2
黄緑色:パターン3
緑色:パターン4
水色と青色の箇所が買いのエントリーサインです。ここでエントリーすれば、上昇して利益が得られます。反対に黄緑色と緑色の箇所でエントリーすれば、下落して利益が得られます。いずれも逆張りで有効なことがこのチャートから見てわかります。ただし、注意しなければならないのが、一番左の水色と青色で囲った箇所についてです。ローソク足を見ると、これらの場所から為替レートは反転せず、さらに下落していることが分かります。実はこの場所はレンジ相場ではなく、下降トレンド相場だったのです。
しっかりとレンジ相場に入ったのを確認してからでないと、ストキャスティクスの指標が活きてきません。左から数えて2番目の水色と青色で囲った箇所では反転していますが、この箇所でも、さらに下降トレンドが続くかも知れません。レンジ相場に入ったのを確認してからエントリーできる箇所というのは左から数えて一番目の黄緑色と緑色で囲った箇所ということになります。
最後になりますが、トレード手法に絶対はありません。今回紹介した手法は一例に過ぎず、ひとつの手法でも自分なりの取引スタイルを築いていく必要があります。今回の例であれば、買われすぎ、売られすぎの目安、ほかの指標と組み合わせる、エントリーのタイミングなど、アレンジをしてもよいでしょう。そしてこれらは数日で編み出せるものではありません。プロ野球選手のバッティングフォームのように、試行錯誤を繰り返しながら自分のトレードを洗練させていきましょう。