2018年3月期中間決算 ソニー・トヨタ・ソフトバンクを分析

ソニー(証券コード:6758)・トヨタ自動車(7203)・ソフトバンクグループ(9984)の2018年3月期(2017年4~9月)の業績発表がなされ、この3社は日経新聞に限らず他のメディアでも報道されましたが、業績推移がまさに三者三様と言える展開です。業績の見方については、

【ニュースで報道される企業業績】投資先の成長性を見極めるための利益・損益の基礎

で基本を解説していますが、投資家にとっては実際の決算発表に即して業績を分析し、株価にどう影響しているかを見ていくのが重要です。なお各企業の業績情報は、各社WebサイトのIR情報に掲載されている「決算短信」等で確認できます。株式を持っていれば、中間配当の計算書とともに事業報告を添付するのが一般的ですので、概要レベルであればこの書面で把握できます。

ソニー:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/fr/17q2_sony.pdf
トヨタ自動車:http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2018/semi/yousi.pdf
ソフトバンク:https://cdn.softbank.jp/corp/set/data/irinfo/financials/financial_reports/pdf/2018/softbank_results_2018q2_001.pdf

重要な3指標となる売上高・営業利益・最終利益を下記に抜粋します。

(単位:百万円)

ソニー・トヨタ・ソフトバンクの売上高・営業利益・最終利益

()は前年同月比増加率
最終利益は当社(親会社)株主に帰属する当期純利益(報道されている純利益)

利益の数字自体は企業規模によって変わるので、この大きさを3社で比較する意味は乏しいです。()内の前年同月比増加(減少)率が重要です。

ソニー

増収かつ営業利益・最終利益とも増益の理想的な形で株価も急騰
10月31日の後場終了後に発表され、翌11月1日の始値は前日終値の4,413円から4,900円へ急騰しました。売上高・営業利益・最終利益のすべてが上昇しているため、申し分ないと言えます。また2018年3月期通期予想は営業利益6,300億円・最終利益3,800億円と上方修正しており、アナリストの事前予想より強気の修正をしていることが株価上昇の要因になったと報道されています。ソニーはアベノミクス開始後の2014年3月期・2015年3月期にも2期連続で1,200億円程度の赤字を出しており、立て直しが求められてきました。リストラ・パソコンVAIO撤退(事業売却)・テレビ事業分社化などの立て直しがようやく実り、先行きが明るい業績となってきました。問題点を強いてあげれば、事業別で見た際に携帯事業(モバイルコミュニケーション)で25億円の営業赤字が出ている点と言えます。

トヨタ自動車

増収・営業減益・最終増益で円安頼みであったが株価上昇
11月7日の後場終了後に発表され、翌11月8日の始値は前日終値の7,183円から上昇して7,250円となりました。トヨタ自動車中間決算の特徴は、営業利益は減少しているという点です。それでも最終利益が増えた理由としては、円安により為替差益が膨らんだことが挙げられます。なお2018年3月期通期予想は営業利益2兆円・最終利益1兆9,500億円と上方修正しており、これも株価上昇の一因になったと言えます。最終利益が増えていること自体は良いことですが、為替の影響が無いと営業利益ベースで減少しているのが(減少幅自体は大きくないですが)1つのポイントです。もし為替が円高傾向になれば、業績が悪かったかもしれないという1つの懸念はあります。決算短信「四半期連結損益計算書」において「為替差益・差損」の項目を見ると、53,819百万円と差益が出ています。ちなみに前年度は△27,907百万円と円高傾向で赤字になっており、また営業利益・最終利益とも前年同月比で約30%減少しています。前年のような業績になった場合は要注意です。

ソフトバンク

増収・営業増益・最終減益で株価冴えず
11月6日の後場終了後に発表され、翌11月7日の始値は前日終値の9,945円から下落して9,800円となりました。トヨタ自動車とは逆パターンで、営業利益は増益なのですが、最終利益が減益となってしまいました。本業の利益が良くなっているにもかかわらず、ソニーやトヨタと比べても市場の受け止め方が厳しくなっています。原因の1つとしては、営業外費用にあたる利払い負担の重さが挙げられますが、より大きな原因を損益計算書から探ると「関連会社株式売却損益」「デリバティブ関連損益」にあることがわかります。両者とも(グループ企業にあたる)中国アリババ株式の売却益に関連します。デリバティブが絡む損益は複雑なところがありますが簡単に言えば、アリババ株が上昇基調にあたるところ前倒しで売却したため、デリバティブ損失につながりました。「デリバティブ関連損益」が当期△504,681百万円・前期△170,058百万円と334,623百万円損失がふくらんでおり、「関連会社株式売却損益」が当期1,510百万円・前期238,101百万円と236,591百万円減少しています。これらが最終利益86.6%減の大きな要因となっています。「非継続事業からの純利益」に関するコメントを見ると、アリババ以外にも前期で連結対象から外した子会社の売却損益が530,339百万円あり、これが無くなったことも純利益減の大きな原因ですが一過性と言えます。支払利息は243,458百万円あり、前期222,022百万円からの増加は1割程度と大きくないですが、売上高4,411,135百万円との比率で見ると5%程度あり、利払い負担としては重い部類です。ソフトバンクは損益計算書だけでなく貸借対照表やキャッシュ・フローもあわせて見ていったほうがいいので、

【業績の理解に深みを増す】資産・負債など企業の財政をまとめた貸借対照表の基礎
【損益計算書より資金繰りが明確】決算で報告するキャッシュ・フロー計算書とは

の内容を踏まえて解説します。流動負債と固定負債にある有利子負債があわせて約15兆円あり、株主資本との比較で見た有利子負債比率も400%近くあるなど、有利子負債の残高も非常に大きくなっています。借入による事業買収を繰り返したために、かなりの有利子負債を抱えることになりました。なおキャッシュ・フロー計算書を見ると、営業活動によるキャッシュ・フロー748,283百万円に対し、財務活動によるキャッシュ・フローは2,191,780百万円と倍以上の大きさです。ソニー・トヨタ自動車とも営業活動によるキャッシュ・フロー>財務活動によるキャッシュ・フローとなっている(こちらのほうが一般的です)のに比べると、異例と言えます。資金繰りに問題があるとは見受けられませんが、借入に関する資金の動きが大きいことが分かります。外国の事業買収については、今期については救いになった点を以下説明します。

ソフトバンクの事業別業績から買収事業が補っている点がわかる

2018年3月期中間決算 ソニー・トヨタ・ソフトバンクを分析事業別に見ていくと、国内通信事業は前年同期比で売上高1.6%減、セグメント利益 6.9%減と業績が悪くなった一方で、米携帯子会社スプリントは前年同期比で売上高4.1%増、セグメント利益 93.3%増と大幅に改善しました。同じ国内通信事業では、NTTドコモは増収減益・AUは増収増益だっただけに、国内通信事業は弱いと見られ、国内通信事業の比較で3社の業績報道をしていた新聞社もありました。その一方で、買収した海外事業で補えることもわかりました。買収事業に使った借入金は大きいですが、メリットもあるだけ今はまだいいと言えます。ただし買収した事業で業績が悪くなった場合は、先行き懸念が出てくることが考えられます。通期予想は国内通信事業のみ示していますが、通期でもセグメント利益減を見込んでいます。

良い悪いだけでなく、多角的に見ていくことも重要

業績発表の報道を触れると、良くなったもしくは悪くなったの二者択一で見ていきがちです。今回の中間決算で言えば、ソニーはそれでも良いように見えます。しかしトヨタ自動車やソフトバンクのように、掘り下げて見ていくことが重要なケースもあり、ソニーもそのように見ていく方がより良いと言えます。営業利益(もしくは経常利益)と最終利益の増減傾向が異なる場合は、その原因は決算短信等の損益計算書で確認できます。その原因が株の一括売却など単に一過性の特別利益である・本業の企業努力とは言えない為替差益が底上げしている・利払いが重い、などの点であれば、今後業績悪化しないか注意して見ていくべきです。また事業別に見ていくことで、成長分野と足かせがどこにあるのか、事業の買収や切り離しがうまくいくのかもわかってきます。トヨタ自動車のように良さそうだけど為替動向によっては心配、ソフトバンクのように悪そうだけど買収事業が利益をあげているのはまだ救い、といったような観点も先読みの上では重要です。