2017年6月の段階で全世界470万台を販売する大人気ゲーム機「Nintendo Switch」。予約待ちは当たり前の品薄状態が続いていて、入荷すれば家電量販店の店先には長蛇の列が出来る人気となっています。2016年「ポケモンGO」の躍進によって任天堂株をさらに勢いづける大きな材料となりました。
ただ、「Nintendo Switch」が発表された翌日の2016年10月21日、任天堂の株価は大幅に下落してしまいます。実にマイナス7.1%安、前日比1925円安という投資家からの手厳しい洗礼でした。たった1年で任天堂に対する評価ががらりと変わったのはなぜなのでしょうか。発表当時、どうして「Nintendo Switch」は評価されなかったのでしょう。任天堂のここ1,2年の動きを「Nintendo Switch」の流れとともに見ていきましょう。
「ポケモンGO」から「Nintendo Switch」への株価の動き
2016年は任天堂の株価にとって波瀾の一年となりました。社会現象にまでなった「ポケモンGO」の大ヒットによって、それまで停滞していた任天堂株は一気に回復します。このまま新型ゲーム機の発表によってさらに勢いづくと思われていましたが、「Nintendo Switch」発表に合わせて大幅に下落しました。
2016年7月 「ポケモンGO」大人気
それまで15,000円台で推移していた任天堂株はポケモンGOによって一気に急上昇。2016年7月19日、年初来高値32,700円をマークします。
2016年10月20日 「Nintendo Switch」発表
翌21日の株価は2万5025円。7月の「ポケモンGO」人気による年初来高値から約7,000円も値下がりしてしまいます。
2016年10月26日 4〜9月期連結決算
このまま上昇を続けるかに思われた株価ですが、10月の連結決算では任天堂自身から「『ポケモンGO』が業績に与える影響は限定的」という見方が示されたため株価は下落します。営業利益の赤字も59億円を計上しました。
2017年3月3日 「Nintendo Switch」発売開始
じわじわと販売を伸ばし、6月末時点の販売台数は100万台を超します。株価もうなぎ上りで、2017年は年明け以降25,000円台で推移していた株価は2017年7月には8年8ヶ月ぶりとなる3万9,530円の高値を付け、一時4万円の大台に手を伸ばしました。
なぜ「Nintendo Switch」は評価が一転したのか
株価の推移からもわかるように、2016年10月の発表では大幅な下落を与えた「Nintendo Switch」。当時はゲーム愛好家からも投資家からもネガティブな意見が多く聞かれました。これには、「ポケモンGO」が子供から大人まで街に出てゲームに夢中になるという社会現象まで巻き起こしゲームを通したライフスタイルの変革を起こしたからといえます。スマートフォンのゲームシェアに風穴を開けた任天堂の功績は投資家から支持されていたのです。
さらなる躍進が期待されていた2016年10月に発表された新型ゲーム機「Nintendo Switch」は従来型のゲームのコンセプトを踏襲したと見られるものでした。持ち運びが可能な据置型ゲーム機というコンセプトが、スマートフォンゲーム全盛にあって時代に逆行するものではないかと考えられたためです。もともとゲーム関連株は実際のハードが普及して評価が定まるまで、株価の推移は不透明で危うい橋を渡ることもあります。持ち運べるならスマートフォンでもいいでしょうし、据置型ならもっと技術的な追求をしてほしいというのが投資家からよく聞かれる声でした。
しかし、発売後、なぜ「Nintendo Switch」そんな発表の頃の「売れない」という噂はすっかり吹き飛ばしこぞって手に入れたいと思われるゲーム機になったのでしょうか。次に、「Nintendo Switch」の魅力を3つのゲームスタイルからまとめてみたいと思います。
ポイントは3つのゲームモードが選べること
据置型ゲーム機として位置づけられている「Nintendo Switch」ですが、ゲームモードが3つあり持ち運んで携帯できるのが特徴です。TVモード、テーブルモード、携帯モードという3つのハイブリッドなプレイモードに注目します。
1.「Nintendo Switch」 TVモード
「Nintendo Switch」のスタンダードなプレイモードです。テレビ画面につなげることで、大きな画面で迫力あるゲームシーンが楽しめます。ソロプレイはもちろん友だちと家族とみんなでゲームできます。「Nintendo Switch」が携帯型ゲームではなく据置型ゲーム機として開発されたのがよくわかるポイントです。
TVモードはテレビと接続した「Nintendo Switchドック」の中央に「Nintendo Switch」本体を差し込むだけで画面表示されます。
2.「Nintendo Switch」テーブルモード
本体の左右に付いているコントローラーのJoy-Conを取り外して、裏側のスタンドを出して立てた状態で楽しめるモードです。タブレット端末をテーブルの上に置いて動画を見る感覚でゲームができます。テレビのない部屋や外出先で友だちとゲームをするときなどに向いています。Joy-Conは本体上部に向かってゆっくりつかみ上げるだけですぐに取り外せるようになっています。
3.「Nintendo Switch」携帯モード
TVモードのドックから引き上げて、本体左右にJoy-Conを取り付けるとすぐに携帯型ゲーム機に早変わりします。切り替わりが瞬時でタイムラグなく遊べます。本体ごと持ち運べるため家のどこでも移動できますし、外出先でずっとゲームで遊べます。
このように「Nintendo Switch」はテレビとつなげて従来型の据置型ゲーム機のように使えるだけでなく、気軽に持ち運べる携帯モードやTVモードがあることでとても新しいゲームスタイルを提案した商品です。
遊びたいときすぐゲームできる迅速さ
場所に囚われず遊べる「Nintendo Switch」は、時間のスピードにも注目が集まっています。TVモード−携帯モード間の切り替わりは非常にスピーディーです。たとえばTVモードとしてドックに本体を差し込んで使っていても、本体を持ち上げるだけですぐに携帯モードで遊べます。ゲームを終了したり電源を落としたりという手間がないので、これからすぐに外出するといった忙しいときや外出先での携帯モードの続きを家に帰ってそのままTVモードでやりたいときなど、時間的なストレスを感じることなく再開できます。
電源関係のスピードはとにかく早いのが特徴の「Nintendo Switch」。電源をオンにして遊べるようになるまでの時間もあっという間ですし、スリープモード状態からの立ち上げもタッチ1つです。
人気度抜群のゲームソフトが続々登場で株価に期待感
「Nintendo Switch」は人気のゲームソフトを続々投入していることも、人気を加速度的にアップしている大きな要因です。先陣を切った『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は「Nintendo Switch」発売に合わせてリリースされました。国内だけでなく海外でも大ヒットを飛ばしていて、2017年4月時点で日本の販売本数は約35万本を突破、アメリカではなんと130万本超の超人気ゲームに化けています。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』がとくにアメリカで受けているのは、その世界観にあるといわれています。一定のルールや進行の道筋を示した上でプレイするという、これまでよく見られた日本発のゲームソフトとは一線を画し、壮大なゲームの世界をプレイヤーが自由に探検して道を切り開くというスタイルだからです。これを「オープンワールド」と呼んでいます。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』そのものがテレビゲームの初期から人気の名作ゲームであるため、ユーザーの親しみも強く、結果発売スタートから「Nintendo Switch」の人気に人を付けるかたちとなりました。
2017年4月には任天堂のアクションゲームの名作『マリオカート8 デラックス』の発売があり、人気に安定感を出します。誰でも一度は遊んだことがあるのではないかと思えるほど、テレビゲームの王道ゲームシリーズが「Nintendo Switch」にプラスされたことで、ソフト数の少なさが懸念されていた声に応えるかたちが生まれました。この頃には2016年10月の発表から、「Nintendo Switch」の将来を心配する声も小さくなり、各メディアで大きく取り上げられたことが追い風となり、「Nintendo Switch」で遊びたいニーズが拡大します。近く、ロールプレイングゲームの名作『ドラゴンクエストXI』(スクウェア・エニックス)の発売も発表されており、「ポケモンGO」から「Nintendo Switch」の流れによって息を吹き返した任天堂の株価のさらなるアップが期待されます。