ドラッグストア業界の売上高順位でウェルシアが首位へ!

2017年度期末決算で、ドラッグストア業界の売上高順位に大きな変動があり、話題になっています。22年間にわたり業界首位に君臨していたマツモトキヨシホールディングス(以下、マツキヨ)が絶対王者の座から転落したのです。マツキヨに何があったのか? ドラッグストア業界の動向と併せて分析します。

期末決算数値による、売上高ランキングは以下の通りです。

●2017年度ドラッグストア売上高上位5社(売上高:単位百万円、カッコ内は前年比)
1 ウェルシアホールディングス 623,163(117.9%)
2 ツルハドラッグ 577,088(109.4%)
3 マツモトキヨシホールディングス 516,147(99.8%)
4 コスモス薬品 502,732(112.4%)
5 スギホールディングス 430,795(103.8%)

ドラッグストアのビジネスモデルはそれほど変わらないはずですが、ウェルシアホールディングス(以下、ウェルシア)、ツルハドラッグ(以下、ツルハ)が王者マツキヨを抜いて躍進した要因はどこにあったのでしょうか。

果てしなき買収合戦で勢力図が一変

ウェルシアが首位に立った一番の要因は、下位のドラッグストアを次々に買収し、規模の拡大を図ったことです。2015年3月にタキヤとシミズ薬品を子会社化、さらに同年9月にCFSコーポレーションを完全子会社化しました。それら子会社の業績が通年で寄与した2017年度決算で、積極的な拡大路線が花開いたことになります。持ち株会社ですので、傘下の子会社が増えれば増収になるのは当然のことです。ツルハも同様に2015年10月にレデイ薬局を買収し、今期も2017年9月に杏林堂薬局を傘下に収める予定です。

躍進した両社と対照的だったのがマツキヨの決算で、売上高自体が上記5社の中で唯一減少しました。0.2%減とわずかな減少ではありますが、それも順位を下げた要因の一つです。背景は地域事業会社を整備するため、新規出店を抑制したこと。同時に不採算店舗の閉鎖も積極的に進め、2017年度は売上高よりも収益の改善を重視したことが響いた形です。その結果、ウェルシア、ツルハに抜かれ、4位のコスモス薬品にも僅差に迫られる事態になりました。このままでは2018年度はベスト3の維持も危うい状態といえます。そこでマツキヨが打ち出した、次の一手とは?

ポイント政策強化に舵を切ったマツキヨ

2017年8月に打ち出した政策が、通信大手NTTドコモ(以下、ドコモ)との業務提携です。狙いは両社の膨大な顧客データの相互活用にあります。現在マツキヨポイントカードの会員数が約2,500万人、ドコモのdポイントクラブの会員数が約6,230万人。これらの顧客の購買データや属性データを活用し、マツキヨのお得な情報をドコモが会員に配信する形で販促効果を高め、ドコモにとってはデータを分析・加工することによって企業向けにマーケティングソリューションを提供し、新たな収益源になることが期待されます。

マツキヨが、2018年4月から4大共通ポイントの一角、dポイントの導入を決めたことは、首位奪回に対する同社の決意の表れといえるでしょう。しかも、共通ポイントならドラッグストア以外にも、さまざまなジャンルのショップやサービスで利用することができることから、自社ポイントよりも魅力が高いのは確かです。特にドラッグストアの主力客である若い女性や主婦はポイントが大好きです。選択肢が多いに越したことはありません。

現在、上位各社の中では首位のウェルシアがTポイント、2位のツルハが楽天Rポイントを導入しており、マツキヨがdポイントを導入することで上位3社がポイント政策の上では同じ土俵に立つことになります。残るpontaポイントはまだドラッグストアの加盟が無いので、今後下位のチェーンが導入に踏み切る可能性もあります。しかし、ほとんどの有力ドラッグストアが共通ポイントを導入することになると、本来の差別化という目的が果たせなくなり、いたずらにポイントの経費だけがかさむというデメリットが生じてきます。ポイント運営元のドコモにしても、すでにポイント政策に1,000億円以上の巨額の資金を投じており、他ポイントとの加盟店の奪い合いも熾烈を極めています。ポイント付与競争はいずれ曲がり角を迎えるかもしれません。

店舗改装、業態多様化を進め、拡大路線回帰

さて、2017年度は店舗純増(新規出店から退店を差し引いた数)が10にとどまったマツキヨですが、2018年度は店舗純増70を計画しており、拡大路線に回帰する方針です。また、改装も実施し、これまでの黄色を基調とした外観が、黒を基調にしたシックなイメージに変身するなど、すでに実施した店舗では様変わりの外観が話題を呼んでいます。また業態の多様化もすすめ、2015年から始めた管理栄養士常駐のヘルスケアショップ「matukiyo LAB(マツキヨラボ)」を今後拡大させる意向。さらに2017年6月には銀座に新業態の「BEAUTY U(ビューティー・ユー)」を出店しています。こちらは化粧品をメインに「美と健康」をテーマに店舗展開を進める予定です。
王者マツキヨが2018年度に首位の座を奪回できるのか、今後の成り行きが注目されます

ドラッグストア業界の将来性は?

さて、ここまでマツキヨを中心に見てきましたが、最後にドラッグストア業界の将来性はどうでしょうか。似たような業態にコンビニがありますが、ともに出店競争で店舗は飽和状態にあります。収益が見込める立地には限りがあることから、ドラッグストアもコンビニも業界再編を進め、既存の店舗を取り込んでいく形で店舗網を拡大していくことになるでしょう。両業界の違いは、コンビニには医薬品が無く、ドラッグストアにはチケット販売、宅急便受付などの付帯サービスが無いことです。コンビニが直接医薬品を販売することはできませんが、薬局を併設することは可能です。ファミリーマートは薬局併設型店舗をすでに50店舗ほど展開しています。ローソンも調剤薬局クオールと提携して、大衆薬の販売に力を入れるなど、コンビニ業界が今後ドラッグストアの顧客を取り込む戦略を強化すれば、ドラッグストアの業績にも影響が出そうです。

一方で増え続ける訪日外国人の需要の取り込みという面では、化粧品中心のドラッグストアに分があり、2020年に向け主力の化粧品やヘルスケア商品の販売を強化する動きもあります。マツキヨの一連の新業態はその動きを先取りした形といえます。

【株主優待情報】マツモトキヨシホールディングス(優待獲得最低投資額:758,000円)
100株以上 2,000円相当の自社商品券
500株以上 同3,000円相当
1,000株以上 同5,000円相当
自社商品券を3月、9月の権利確定で年2回贈呈されます。特筆すべきはこの商品券には使用期限が無いこと。通常株主優待券は半年や1年間の使用期限があるため、無理して使用することも多く、嬉しい配慮です。
優待と配当を合わせた総収入は100株の保有で年間14,000円。総合利回りは1.85%で、特に高い水準ではありませんが、使用期限が無いことを考えると、お得な優待といえます。金券ショップでも高い買い取り率になっており、使用しなければ売却して現金化することも可能です。

【株価診断】マツモトキヨシホールディングス
株価 7,580円(2017年9月8日終値)
株価位置レシオ=98.8%で「超高値圏」。
予想1株配当=100円
予想PER(株価収益率)=18.91倍
実績PBR(株価純資産倍率)=2.09倍

実績PBRが2倍を超えるなど、指標面ではやや割高です。株価は拡大路線回帰を評価して、年初来高値更新目前。チャート的には短期線が25日移動平均線に接近しており、デッドクロスになる可能性もあることから、高値警戒感が出ています。
ただし、2017年度が減収だったとはいえ、最終利益は過去最高を更新しており、成長は続いています。当面は見送り、9月中間決算の数字を確認してから投資を判断されることをおすすめします。

※「株価位置レシオ」とは、年初来高値を100として、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。