日本マクドナルドHDから学ぶ投資の教訓とは?

外食大手、日本マクドナルドホールディングス(以下日本マクドナルドHD、ジャスダック・証券コード2702)の株価上昇が止まりません。純利益が過去最高を更新する、業績の大幅な伸びがその背景にあります。期限切れ食肉使用問題や異物混入事件で信用が失墜し、一時は倒産まで囁かれた同社がなぜ業績と株価の急回復を成し遂げたのか。そこには明確な理由が存在していました。日本マクドナルドHD株から学ぶ投資の教訓とは?

カサノバイズムの浸透でどん底からV字回復へ

日本マクドナルドHDの最近の株価は2017年8月22日終値で4,835円。上場来高値は2001年7月30日に付けた5,080円ですので、ほぼ最高値に近い水準です。しかし、ここまで回復する道のりは決して平坦ではありませんでした。2014年3月にサラ・カサノバ氏が日本マクドナルドHDの社長兼CEOに就任。海外のマクドナルドでキャリアを積んだカサノバ氏の経営手腕に期待が寄せられました。期限切れ食肉使用問題という難題を抱えての就任でしたが、2014年12月期に連結決算で218億円の赤字に転落。最悪の船出となりました。

追い打ちをかけるように翌2015年にはビニール片の異物混入事件も発生し、信用失墜から顧客離れが加速する事態に。それを反映するように2016年1月22日に株価はついに2,215円の安値を記録し、上場来高値の半値以下に沈みます。米マクドナルドが日本法人の株式売却を検討するなど、危機的状況を迎えましたが、ここでカサノバ氏は大胆な構造改革を打ち出します。どん底からV字回復へ向かうその改革とは?

大幅な店舗改装でイメージが一新

まずカサノバ氏は顧客離れが進んだ原因を直接消費者に聞くべく、自らが全国行脚を実施。顧客はもちろんのこと、オーナー、店長の意見も聞き、改革の方向性を探ります。そこで出た意見で多かったのがモダンな内装の店舗が少ないというものでした。そこで苦しい業績の中でしたが、店舗の大幅な改装を前倒しで実施。その結果、マクドナルドをよくご利用になる方であればお気づきのことと思いますが、改装によりイメージがすっかり一新しました。黒を基調としたモダンなデザインの内装は高級感が漂い、一段グレードアップした感があります。以前のマクドナルドはファストフード店特有のカジュアルさ、悪くいえば安っぽさがあり、加えてたばこ臭が立ち込める、環境の悪いイメージが敬遠されていました。このイメージを払拭すべく、黒を基調とした店の他、デザイナーズレストラン風の大胆な内装の店もオープンさせるなど、店舗体験を楽しめる魅力ある空間作りに成功します。これが日本マクドナルドHDの目指す「モダン・バーガー・レストラン」構想です。この効果は十分業績に反映しているといえます。

さらに、現場で働く社員のやる気を喚起するため、赤字決算でありながらあえて2%の給与アップを実施。外国人社長ならではの大胆な発想が周囲を驚かせます。カサノバ氏と直に接した社員やクルー(アルバイト)からの評価は「気さくで楽しい社長」と概ね好意的で、カサノバイズムともいえる改革は着実に実を結んでいきます。これらの改革が功を奏し、前2016年12月期の業績は53億円の黒字に浮上。そして、今2017年12月期は上方修正して200億円の過去最高益を更新見込みと、V字回復を果たします。

今後の店舗施策についてカサノバ氏は、業績の悪化で抑制していた新規出店を再開する方針を表明しました。最盛期は4,000店近くあった既存店は相次ぐ不採算店の閉鎖で約2,900店まで減少。「モダン・バーガー・レストラン」という質的向上とともに、規模の拡大が次の課題になるでしょう。

ユーザーが多いポイントカード導入で集客力がアップ

日本マクドナルドHDから学ぶ投資の教訓とは?2015年12月から20か月連続で増収を続けるもう一つの大きな要因が、有力ポイントカードの相次ぐ導入です。自社店舗以外にもさまざまな店舗やサービスで利用できる共通ポイントは現在、NTTドコモ系の「dポイント」、楽天系の「Rポイント」、ファミマ系の「Tポイント」、ローソン系の「Ponta」が4強を形成しています。マクドナルドではこのうち、「dポイント」「Rポイント」を導入し、ポイント施策で大攻勢をかけています。この2銘柄にした理由は競合であるロッテリアが「Tポイント」、ケンタッキー・フライド・チキンが「Ponta」を導入していることから重複を避けるためです。今後は現金払いや一部電子マネーに限定されていた支払い方法に、クレジット決済の導入を加える予定で、ますます利便性が向上し、一段の集客力強化が見込まれます。

業界のトップクラス銘柄は、業績悪化時こそが買い場

さて、今回の日本マクドナルドHD株の大相場から学べる投資の教訓は、各業界のトップクラスに位置する銘柄は、業績悪化した時こそが実は買い場なのだということです。かつてソニーやファッション通販大手のスタートトゥデイも業績の悪化で、株価1,000円大台割れまで下落しました。現在ソニーは4,000円台、スタートトゥデイは3,000円台ですので、この時両社の底力を信じ1,000円割れを買った投資家は大きな利益を得たことでしょう。なぜなら、実力のある企業は業績が悪化すれば必ず手を打つはずであり、構造改革を実施することによって元々実力があるので業績は急回復し、株価も上昇するというメカニズムです。

日本マクドナルドHD株は下記の手厚い株主優待の人気が株価を下支えし、1,000円割れの事態は免れましたが、それでも倒産の噂まで流れる中を買い進むのはやはり勇気がいることです。人間は大勢の流れに付いた方が安心できる性質があります。しかし、一歩視点を変えて考えてみるところに、大きな投資成果を得られるヒントが隠れているかもしれません。日本マクドナルドHDの株価と業績の急回復はそのことを教えているといえます。

【株主優待情報】優待獲得最低投資額=483,500円
ハンバーガー類、サイドメニュー、飲み物の無料引換券が1枚になったシートが6枚で1冊の株主優待券綴りを保有株数に応じ年2回贈呈。

100株以上 1冊
300株以上 3冊
500株以上 5冊

この株主優待券、1冊でどれくらいの価値があるのでしょうか。需要の多いビッグマック380円、マックフライポテトL320円、コカ・コーラL250円の組み合わせで計算すると950円になり6枚合計で5,700円分の価値となります(組み合わせにより異なる)。これが6月と12月の年2回の権利確定で配布されるので、年間では11,400円と最低単元でも万単位の価値を有します。配当金3,000円(100株換算)を加えた年間総収入は14,400円で総合利回りは2.98%。超低金利下の現在では十分な高利回りといって良いでしょう。

【株価診断】日本マクドナルドHD
株価 4,835円(2017年8月22日終値)
株価位置レシオ=96%で「超高値圏」。
予想1株配当=30円
予想PER(株価収益率)=32.15倍
実績PBR(1株純資産)=5.52倍

超高値圏にあるので、短期投資はリスクが大きいでしょう。予想PERや実績PBRの指標面からみても割安感はありません。当面は最低単元の100株を購入し、株主優待を受けながら中長期で大きな値上がりを待つ戦略が無難といえます。株価水準に比べて配当は少なめですが、今後業績の向上とともに増配が見込めますので、上記株主優待と併せ、インカムゲイン狙いの投資も有効です。

※「株価位置レシオ」とは、年初来高値と比較して、現在の株価がどの程度の位置にあるかを示す指標です。数値が高いほど高値圏、低いほど安値圏にあることがわかります。